2020年NPT再検討会議第2回準備委員会に合わせて、高校生をスイス・ジュネーブ市に派遣しました。

2018年4月

 2020年NPT再検討会議第2回準備委員会に合わせ、その開催地であるスイス・ジュネーブ市に「核廃絶!ヒロシマ・中高生による署名キャンペーン」参加の高校生8名を派遣しました。
 本準備委員会の傍聴や署名の提出、平和首長会議主催ユースフォーラムでの発表や地元の青少年との交流などを通じ、次代を担う若い世代の平和に対する思いを国連関係者等に届けました。

高校生の派遣日程:2018年4月22日(日)~4月29日(日)

4月23日(月)
NPT再検討会議第2回準備委員会(1日目)の傍聴

派遣高校生は、メモを取りながら、熱心に開会式と一般討論を傍聴しました。


国連欧州本部内被爆樹木の生育状況視察会

平和首長会議と国連の共同の取組として、2016年5月に松井会長がマイケル・モラー国連欧州本部長に贈呈した被爆イチョウの苗木が、同年10月に潘基文国連事務総長(当時)の手で国連欧州本部の敷地内に植樹されました。今回、その植樹場所を視察し、被爆イチョウ2世が順調に育っていることを確認しました。



国連欧州本部内被爆樹木の生育状況視察会
国連ガイドツアーへの参加

国連の概要をはじめ、国連には193か国が加盟しており、バチカンとパレスチナがオブザーバーであることや、公用語は6つ(英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語)あること、国連欧州本部は国際連盟の本部として建てられたことなどについて、現在も使われている議場をめぐりながらガイドによる説明を聞きました。




4月24日(火)
ホワイト在ジュネーブ国際機関コスタリカ政府代表部大使
(元核兵器禁止条約交渉会議議長)への署名目録の手交行事

派遣高校生を代表し、盈進高等学校の生徒が「核兵器禁止条約」の早期締結を求める市民署名目録をホワイト大使に手渡し、「署名活動を通してたくさんの被爆者と触れる中で、自分たちが次の世代に被爆者の思いを受け継いでいかなければならない。署名活動は小さな行動ではあるが、この署名は被爆者の思いであり、私たちの願いである」と伝えました。
ホワイト大使は、「このような署名をいただけることを心から感動している」と涙を浮かべながら話され、「みなさんにはポテンシャルがあり、情報収集能力もある。新しい方法を考えながら行動してほしい。今後も署名活動を続けてほしい」と派遣高校生たちを激励されました。


ホワイト在ジュネーブ国際機関コスタリカ政府代表部大使(元核兵器禁止条約交渉会議議長)への署名目録の手交行事
ICRC(赤十字国際委員会)職員との面会

ICRCを訪問し、職員からICRCの活動について説明を受けました。ICRCは広島で原爆が投下された後、医療従事者を広島に派遣して記録をとり、人道的なメッセージを発信したことや、核兵器禁止条約を必要不可欠と考え、各国政府に同条約の必要性を訴えているなどの説明がありました。
この後、活発な質疑応答が行われ、派遣高校生から、「核兵器廃絶のために若者ができることは何か」、「核兵器についての考え方が異なる、核保有国と非核保有国との間の壁を壊すにはどうしたらいいのか」といった質問が出ました。


ICRC(赤十字国際委員会)職員との面会

国際赤十字・赤新月博物館視察

国際赤十字・赤新月博物館を訪問し、赤十字の成り立ちや活動の歴史について学びました。
博物館では、赤十字に助けられた人々の体験談を等身大の映像を通して聴くことができる等、最新技術を駆使した斬新な展示が多く、派遣高校生にとって命や人権について深く考える良い機会となりました。



国際赤十字・赤新月博物館視察


4月25日(水)
NPT再検討会議第2回準備委員会NGOセッションの傍聴

派遣高校生の一人は「大量破壊兵器のための投資ではなく、私たちの未来のために投資してください。核兵器はその存在が危機であるのに、その核兵器による安全保障は機能するのでしょうか。私たちの教育に投資してください」というPAXによる訴えに心を動かされたと感想を述べました。


NPT再検討会議第2回準備委員会NGOセッションの傍聴
CTBTOとパグウォッシュ会議主催のサイドイベント(Bridging the GAP: the CTBT)へのオブザーバー参加

翌日予定されている平和首長会議主催ユースフォーラムの会場の下見を兼ねて、CTBTOとパグウォッシュ会議主催のサイドイベントを傍聴しました。核兵器廃絶に向けて、若者の役割が大事であることや、若者と大人がそれぞれの強みを活かし、協力することが重要であることなどが発表され、派遣高校生は自分のこととして受け止めていました。




4月26日(木)
平和首長会議主催ユースフォーラム

会場には、松井会長や田上副会長を始め、カスパーセン国連軍縮部ジュネーブ支部長兼軍縮会議事務次長、外務省軍備管理軍縮課の今西課長など、およそ100名の聴衆が集まりました。発表に臨んだ派遣高校生8名は、各校5分の発表時間で、それぞれ作成したパワーポイントを用いて、平和活動を通して感じた平和への思いを英語で発表しました。    
最初に広島女学院高等学校が発表を行いました。被爆証言や手記をインターネット上で配信するサイトの運営を通して、被爆者と交流する中で、自分たちが被爆証言を直接聴くことができる最後の世代であることを認識し、人々に核兵器廃絶に対する関心を高く持ってもらうためにはどうしたらよいか考えるようになったと伝えました。また署名活動に多くの高校生が参加してくれたことを通じて、平和活動には交流やつながりが重要であると実感し、新たな交流やつながりを作っていこうと呼びかけました。
次に修道高等学校が発表しました。署名活動を行う中で、一人の被爆者に出会い、被爆の実相について自分自身の知識が足りないことを思い知らされ、核兵器廃絶に向けた思いを新たにしたことや、ベアトリス・フィンICAN事務局長と面会し、平和活動に取り組むときは、楽しむことも大事であるとのアドバイスをもらい、楽しみながら平和活動を行うことで、若者の間に平和活動を広めていきたいと語りました。
その次は、盈進高等学校が発表しました。被爆者との交流を通じて、「このような思いを他の誰にもさせてはならない」という被爆者の思いを守り伝え、悲劇を繰り返さないために署名活動を開始したことを伝えました。また、若者は、被爆者の平和に対するメッセージを継承していく責任があり、世界を変えることができる力を持っていると訴えました。
最後に沖縄尚学高等学校が発表しました。第二次世界大戦後、アメリカ占領下の沖縄に核兵器が持ち込まれ、核ミサイルが誤発射された事件から、核兵器は絶対に廃絶されるべきものであると考え、沖縄でも核兵器廃絶のための署名活動を行っていることを説明しました。また、戦争の恐ろしさを伝えていくために従軍看護婦として沖縄戦に動員された白梅学徒隊の体験を語り継ぐガイドも行っており、これらの活動を通じて、平和の実現に向けて最も重要なことは「言葉」であるとの思いに至り、戦争の記憶を風化させないためにも語り継ぎ、話し合うことが世界平和につながると訴えました。
その後、ナガサキ・ユース代表団、海外ユースとして、スカイプを通してマンチェスター市、続けてグラノラーズ市、PAX、INESAPの青少年による発表がありました。それぞれの特徴ある平和活動について、有意義な情報交換となりました。
これまでに何度もリハーサルを重ね、本番直前まで発表内容を暗唱しようと努力してきた派遣高校生は、大勢の観衆を前にしても、ひるむことなく堂々と発表を行いました。その思いが通じたのか、質疑応答の時間では、役員都市からの参加者や、世界各国の若者から質問が相次ぎ、時間内に答えられないほどでした。若者同士の活発な意見交換や、若者の活動を賞賛するコメントもありました。

(各発表資料はこちら)
ア 平和首長会議高校生代表団
 ・ 広島女学院高等学校
 ・ 修道高等学校
 ・ 盈進高等学校
 ・ 沖縄尚学高等学校
イ ナガサキ・ユース代表団
ウ 英国・マンチェスター市
エ スペイン・グラノラーズ市
オ PAX
カ INESAP


平和首長会議ユースフォーラム
髙見澤軍縮会議日本政府代表部特命全権大使との意見交換会

髙見澤大使との意見交換会に、ナガサキ・ユース代表団と共に参加しました。 髙見澤大使から、「日本は核軍縮についてはとても熱心だが、なぜ地雷やクラスター爆弾についての発言が少ないのか」等、今考えておられることを話されました。また、「物事を考える際は偏った見方をせず、複眼的に思考してほしい」と若者へアドバイスをされました。


髙見澤軍縮会議日本政府代表部特命全権大使との意見交換会
被爆者(児玉三智子日本被団協事務局次長)との面会

派遣高校生は児玉事務局次長を囲み、被爆体験や今も残る苦しみや悲しみに耳を傾けました。「被爆の実相を伝えられる人が少なくなってきている今、派遣高校生の皆さんにぜひ後世に伝えてほしい。今取り組んでいる活動を続けてほしい」と派遣高校生たちを激励されました。児玉事務局次長の一言一句に聴き入っていた派遣高校生たちは、今回の証言に衝撃が走った様子で、面会後も、心が大きく動かされた心境を話していました。


被爆者(児玉三智子日本被団協事務局次長)との面会


4月27日(金)
ジュネーブインターナショナルスクール国連キャンパスの生徒との意見交流

派遣高校生は同年代の生徒約70名の前で、昨日のユースフォーラムに引き続き、平和活動を通して感じた平和への思いや佐々木禎子さんと折り鶴の関係について発表しました。 質疑応答の時間では、インターナショナルスクールの先生や生徒から署名活動についての質問が多く挙がり、意見を交わしました。 最後に8つのグループに分かれ、折り鶴を折るワークショップを実施しました。英語力に不安を感じていた派遣高校生もいましたが、折り鶴を折る作業を通じて、自然に交流が深まりました。


ジュネーブインターナショナルスクール国連キャンパスの生徒との意見交流
ナガサキ・ユース代表団主催のサイドイベント
(We are“HERE”)へのオブザーバー参加

ナガサキ・ユースの5人が、記憶の継承というテーマで、核兵器の恐ろしさや平和への思いを訴えました。ナガサキ・ユースと派遣高校生とは、ジュネーブ滞在中に何度も顔を合わせて交流を深め、貴重な体験を共有しました。


ナガサキ・ユース代表団主催のサイドイベント(We are“HERE”)へのオブザーバー参加


4月28日(土)
市内視察

レマン湖や国家記念碑、花時計を散策後、サン・ピエール大聖堂を始めとした旧市街を視察しました。サン・ピエール大聖堂の塔の上から見える美しい景色に派遣高校生は感動した様子でした。


市内視察


派遣高校生の感想

・ホワイト大使への署名目録手交の際に、「20年、30年と待ってはならない。今、若い人たちが行動することに意味がある。」と声を掛けていただきました。私にできることは小さなことかもしれませんが、これからも諦めずに活動し続けることが大切だと改めて感じました。

・ユースフォーラムでは、署名活動中にお会いした被爆者の方から伺った被爆体験について、彼女の悲痛な心の叫びを少しでもリアルに世界の人々に伝えようと考えました。本番では、会場にお越しくださった方々の目を見つめて、一言一句大切に発表しました。発表の最後には多くの拍手を頂き、被爆者の方の心の叫びが伝わったと思い、本当に嬉しく思いました。

・私は、核兵器廃絶という目標をこれまで自分1人の視点からしか見ることができていませんでした。髙見澤大使との意見交換会を通じ、国によって、政治状況や核兵器廃絶のための取組も違うが、その中で「互いに同じ目標に向かって努力すること」に意味があると感じました。

・インターナショナルスクールでは、佐々木禎子さんのお話を交えながら、一緒に鶴を折りました。鶴を折り終わった後、彼らと意気投合し、SNSで繋がりを持ちました。遠く離れている人達と協力して活動するのは難しいですが、今後はSNSを活用して、普段の平和活動など近況を共有することが可能であると感じました。




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