第11回NPT再検討会議に合わせて、平和首長会議ユースを米国・ニューヨーク市に派遣しました。

2026年4~5月

米国・ニューヨーク市で開催された第11回NPT再検討会議に、核兵器廃絶の実現に向けて様々な平和活動に取り組む広島の高校生・大学生を「平和首長会議ユース」として派遣し、同会議のサイドイベントとして開催する平和首長会議ユースフォーラムでの発表や意見交換、会議傍聴や国連関係者への署名の手交、世界で平和活動に取り組む若者との交流などを通じ、次代の平和活動を担う青少年の育成を図りました。

平和首長会議ユース

平和首長会議ユースの派遣日程:2026年4月26日(日)~5月3日(日)

4月27日(月)

第11回NPT再検討会議のオープニング傍聴

オープニングでは、中満国連事務次長による趣旨説明の後、再検討会議の正副議長の選出や、グテーレス国連事務総長による演説などが行われました。副議長の選出をめぐっては、核開発問題等を背景に各国代表による意見表明や応酬が行われる場面も見られました。核保有国を含めた核軍縮・不拡散に関する最大の多国間枠組みであるNPTにおいても、現在の国際情勢が大きな影響を及ぼしている状況を目の当たりにしたことで、ユースは、核軍縮を取り巻く国際社会の複雑な現実や合意形成の難しさについて理解を深めました。一方で、「国際情勢が混沌としている今だからこそ、この会議は核保有国と非核保有国が対話する極めて重要な場であると改めて感じた」との感想もあり、自分たちが果たすべき役割について改めて認識を深めました。

オープニング傍聴
日本被団協主催、広島市及び長崎市共催の国連原爆展オープニングセレモニーへの出席

国連本部ビジターロビーで開催された同展示のオープニングセレモニーに出席しました。この原爆展は、被爆者の体験と「二度と誰にも同じ苦しみを味わってほしくない」という願いを共有することを目的として開催されるもので、国連での開催は今回で5回目となります。松井会長は開会挨拶の中で、日本被団協が2024年にノーベル平和賞を受賞した後も厳しい国際情勢が続く中、NPT再検討会議の場で原爆展を開催することは非常に意義深いことであると強調し、参加者に対して被爆の実相を心に刻み、議論を深めてほしいと訴えました。ユースは、「核兵器の恐ろしさを伝える上で重要な展示だと感じた」、「多くの人に見てもらいたい」など、被爆の実相を広く伝えていくことの重要性を改めて認識していました。

セレモニー出席
UNICEF(国連児童基金)訪問

UNICEFを訪問し、影山財務専門官及び原元パブリック・パートナーシップ担当官から、UNICEFの概要に加え、ご自身の業務内容やキャリアなどについてお話を伺いました。質疑応答では、ユースから、国際機関職員を志したきっかけや、学生として社会課題とどのように向き合うべきかなどについて質問がありました。これに対し、関心を持つことの重要性や、学生のうちに世界各地の現場を自分の目で見ることの大切さ、多様な人々と協働する国際機関で働くことの魅力などについてお話しいただきました。ユースにとって、今後の活動やキャリアについて考える貴重な機会となりました。

UNICEF職員(後列両端)とユース
国連本部ガイドツアーへの参加

ガイドツアーでは、総会議場や経済社会理事会議場など国連本部内の各種会議場に加え、平和の鐘、広島・長崎原爆展、各国から国連へ贈られた品々を展示するエリア等を見学しました。ユースは熱心にガイドの説明に耳を傾けており、国連における会議運営や合意形成の仕組みへの理解を深めるとともに、国際外交の中心地である国連本部の雰囲気を実際に肌で感じる機会となりました。

ガイドツアーの様子

4月28日(火)

平和首長会議ユースフォーラムの開催

同会議のサイドイベントとして開催した本フォーラムでは、平和首長会議ユースを含む、世界各地で平和活動に取り組む若者10組が登壇し、核兵器のない平和な未来に向けたビジョンや取組について、それぞれの視点から発表を行いました。発表後のディスカッションでは、活動内容を共有するためのプラットフォーム化に関する提案や、核軍縮における分断や課題をどのように埋めていくかについて意見交換が行われるなど、登壇者と参加者の間で活発な議論が展開されました。また、海外からの参加者からは、「この場にいること自体が意思決定者への影響につながっている」と、ユースに対する激励の言葉も寄せられました。

発表を行うユース
発表を行うユース
発表を行うユース
発表を行うユース
ディスカッションの様子
登壇者と
市川軍縮会議日本政府常駐代表との面会

市川軍縮会議日本政府常駐代表と面会し、ユース代表がこれまで取り組んできた平和活動について報告を行いました。続く質疑応答では、ユースから、異なる立場や価値観を有する国々との対話のあり方や、核抑止の下で核廃絶をどのように進めていくべきかなどの質問がありました。これに対し、市川大使からは、核兵器への賛成・反対という立場だけでなく、「なぜその考えに至ったのか」を理解し、共通点を探りながら対話することの大切さについて助言をいただくとともに、「若い人がメッセージを引き継いでいくことが大切」と激励をいただきました。

市川軍縮会議日本政府常駐代表(後列左から2番目)とユース
ペース大学訪問

高校生メンバー6名がペース大学を訪問し、平和・軍縮を専門とするボルトン教授及びウェルティ教授、同大学の学生2名と交流を行いました。ボルトン教授からは、平和・正義研究や核軍縮に関する取組に加え、国連において若者が果たす役割や、若者の参画の重要性について説明がありました。その後は、平和教育や核軍縮、大学生活などについて意見交換が行われました。ユースにとって、大学の開かれた雰囲気に触れるとともに、同世代の学生との交流を深めることができる貴重な機会となりました。

ペース大学の教員・学生とユース
ニューヨーク市立大学訪問

大学生メンバー2名がニューヨーク市立大学を訪問し、クラズノ講師が担当する、政治的意思決定を研究テーマとする大学院ゼミに参加しました。ゼミでは、コフィ・アナン元国連事務総長の意思決定に関する講義や、学生によるネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領の政治思想についての報告を聴講しました。また、ユースからは核兵器廃絶に向けた提言について発表を行い、クラズノ講師からは、提言への賛同とともに、核兵器禁止条約の成立を例に、非政府組織と政府が連携して取り組むことの重要性についてコメントをいただきました。

4月29日(水)

平和首長会議サイドイベント「Taking Stock of the NPT : Achievements, Persistent Challenges, and Emerging Opportunities」の傍聴

ロビン・ガイス国連軍縮研究所(UNIDIR)所長、中満国連事務次長、松井会長、中村外務省軍縮不拡散・科学部長による演説や、NPTに関する専門家による報告等を傍聴しました。ユースは熱心にメモを取りながら耳を傾けており、特に、中満事務次長による「今回のNPTにおいて成果文書が採択されることは、多国間主義の実効性を示す上で極めて重要である」との訴えが印象に残っている様子でした。

傍聴の様子
ニューヨーク大学訪問

ニューヨーク大学で開催されたイベント「Youth Dialogue on Peace and Nuclear Disarmament」に参加しました。前半では、ユース代表による核兵器廃絶に向けた提言の発表や、ニューヨーク大学の学生による核軍縮をめぐる課題に関する発表が行われ、若者参画の重要性や国家間の信頼醸成の必要性などが訴えられました。後半のディスカッションでは、地域を超えて若い世代の核軍縮に関する意識をいかに高めていくかについて意見交換が行われました。核問題に関心のない学生の意識を喚起する手段としてソーシャルメディアが有効であることや、平和教育を受けること自体が関心を高める契機となることなどについて議論が展開されました。

イベント参加者とユース
UNDP(国連開発計画)訪問

UNDPを訪問し、山口上級顧問から、広島の使命である核兵器廃絶と、UNDPが取り組む開発分野(生活改善、貧困・紛争・気候変動への対応)との共通性を含めたUNDPの使命や役割、「人間の安全保障」の考え方、SDGsへの取組、国際機関における働き方などについてご説明いただきました。また、質疑応答では、国際的なルールや合意、仕組みを構築していく国際機関の役割や、各国政府職員と国際機関職員との視点の違いについてご説明いただきました。さらに、困難な課題を困難なものとして認識した上で、他者と協力しながら答えを模索し続ける姿勢や、挑戦を重ねることの重要性についてもお話しいただきました。

UNDP職員(中央奥)とユース

4月30日(木)

UNIS(国連国際学校)訪問

国連国際学校マンハッタン校を訪問し、まず、同校生徒と朝食を取りながら、身近な話題について会話し、交流を深めました。続いてギャラリーウォークが行われ、生徒が作成した原爆被害や、原発事故、核兵器開発等に関するポスターについて説明を受けるとともに、質疑応答を行いました。その後の高等部集会では、広島市・長崎市両市長及びユース代表によるプレゼンテーションと質疑応答が行われました。ユース代表は、学校の平和活動や、AIを活用した被爆証言の継承、平和記念公園での発信活動などについて紹介し、若者による発信や対話の重要性を訴えました。また、若者がどのように関わるべきかとの質問に対しては、SNS等を活用した発信の有効性について、自らの経験も交えながら意見を述べました。最後に、初等部4年生による平和セレモニーが行われ、歓迎カードや合唱などが披露されました。ユースからは、「他国の視点から考えることで相手への理解につながると気づいた」、「ギャラリーウォークで学んだ発表方法や構成の工夫を今後の活動に生かしたい」などの感想が聞かれ、それぞれ今後の平和活動への意欲を高めていました。

UNISの教職員・生徒とユース
ユース代表によるプレゼンテーション
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)訪問

UNHCRを訪問し、ビテッティシニア広報官から、紛争や迫害により多くの人々が故郷を追われている現状や、緊急支援・保護活動についてご説明いただきました。続く質疑応答では、難民受入れの仕組みや理想と現実のギャップについてユースから質問がありました。これに対し、国際法上の原則や各国の役割についてご説明いただくとともに、個々の状況に目を向け、一歩ずつ課題を解決していくことの重要性についてお話しいただきました。ユースからは、「政府や軍部によって戦争が引き起こされた場合でも、実際に大きな影響や被害を受けるのは都市や市民であることを改めて実感した。だからこそ、平和のネットワークをさらに広げていくことが大切だと思った」との感想が聞かれ、平和や人道支援への理解を深める貴重な機会となりました。

UNHCR職員(前列中央)とユース
中満国連事務次長兼軍縮担当上級代表への署名の手交及び面会

ユース代表から中満国連事務次長に、約3万4千筆分の「『核兵器禁止条約』の早期締結を求める署名」の目録を手交しました。続く質疑応答では、ユースから、核兵器廃絶に向けた活動を進める中で、異なる立場の人々とどのように向き合うべきかや、自分たちの声を社会へ届ける方法などについて質問がありました。これに対し、中満事務次長からは、核軍縮は安全保障と密接に関わる課題であり、幅広い知識と理解が重要であること、また、異なる立場との対話を重ねていくことの大切さについてお話しいただきました。さらに、社会に影響を与える手段として、民主主義の下で意思を示すことの重要性についてもご説明いただきました。ユースにとって、多くの示唆と学びを得る貴重な機会となりました。

署名手交の様子
中満国連事務次長(中央)とユース
国連軍縮部、ポスターハウス(美術館)及び日本政府共催レセプションへの出席

レセプションには、山﨑国連大使、中満国連事務次長の出席の下、ユースのほか、平和首長会議主催ユースフォーラムで発表を行った若者や、ニューヨークで平和や核軍縮を学ぶ学生・大学関係者、NGO関係者等、約100人が招待されました。
冒頭では、山﨑国連大使及び中満国連事務次長による開会挨拶が行われ、前半には「核軍縮を進める上でのアートや創造的表現が持つ力の探求」をテーマに、アーティストらによるパネルディスカッションが実施されました。後半は交流の時間となり、ユースも他の学生らと意見交換を行うなど、同世代との親睦を深めました。

レセプション参加者と交流するユース

5月1日(金)

第11回NPT再検討会議NGOセッション傍聴

平和首長会議や被爆者団体を始めとする世界各地で活動する団体が、各国政府関係者に市民社会を代表して声を届けるNGOセッションを傍聴し、日本被団協、松井会長、鈴木副会長、広島県知事、長崎県副知事らによる演説を聞きました。傍聴後、ユースからは、「核問題は特定の国だけの問題ではなく、人類全体が共有し向き合うべき課題なのだと改めて感じた」、「核抑止に依存しない新たな安全保障のあり方について考える必要があり、そのためには市民レベルで平和文化を社会に根付かせていくことが大切なのだと感じた」との感想がありました。

NGOセッション傍聴
市内視察

メトロポリタン美術館、チェルシーマーケット等を視察しました。視察を通じて、ニューヨークの歴史や文化、多様な価値観に触れるとともに、都市空間の活用方法や人々のライフスタイルなどについて理解を深めました。

メトロポリタン美術館

平和首長会議ユースの派遣の感想

  • 今回の派遣を通して、国際情勢の厳しい現状に直面し、「対話の限界」という現実や、「どうすれば各国が、核兵器を減らすことの方がより安全だと考えられるようになるのか」という根本的な課題について深く考えさせられました。だからこそ、次代を担う私たちがこうした難しい課題に誠実に向き合い、被爆地・広島から核兵器の危険性を訴え続けていかなければならないと強く実感しました。
  • 今回の派遣での様々な出会いを通して、これまで行ってきた平和記念公園でのガイド活動は、平和に関心を持って広島を訪れた方々に向けた活動だったことを改めて実感しました。世界には核兵器や平和問題に関心を持つ人ばかりではないからこそ、より多くの人に関心を持ってもらい、対話の輪を広げていくためには、広島の中だけでなく外へ向けて発信していくことが大切だと感じました。
  • 今回の派遣を通じて、平和・核兵器・国際関係に対する私のイメージは大きく変化しました。国連職員や国際機関で働く方々から仕事の現実や思いを直接伺い、将来のキャリアについて深く考えるきっかけとなりました。これまで漠然としていた世界がより身近に感じられるようになり、今後さらに国際関係について学び、世界に貢献していきたいという思いを強くしました。
  • 今回の派遣を通して、「常に考えながら行動すること」の大切さを学びました。派遣期間中にお会いした国連職員や国際機関の方々は、それぞれ異なるアプローチを取りながらも、さまざまな課題に向き合い、行動し続けていました。そして、その行動の背景には、多くの学びや深い考察があることを実感しました。私もこれから、あらゆることに関心を持って学び続けるとともに、自ら考え、行動し続けることを大切にしていきたいです。
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