第11回NPT再検討会議第3回準備委員会に合わせて、平和首長会議ユースを米国・ニューヨーク市に派遣しました。

2025年4月

米国・ニューヨーク市で開催された第11回NPT再検討会議第3回準備委員会に、学校教育活動の一環として核兵器廃絶の実現に向けて様々な平和活動に取り組む広島の高校生を「平和首長会議ユース」として派遣し、準備委員会のサイドイベントとして開催する平和首長会議ユースフォーラムでの発表や意見交換、会議傍聴や国連関係者への署名の手交、世界で平和活動に取り組む若者との交流などを通じ、次代の平和活動を担う青少年の育成を図りました。

平和首長会議ユース

平和首長会議ユースの派遣日程:2025年4月27日(日)~5月3日(土)

4月28日(月)

第11回NPT再検討会議第3回準備委員会のオープニング傍聴

オープニングでは、議長の開会挨拶に続いて、中満国連事務次長が演説を行い、その中で「近年の国際情勢は、ただ困難というだけではなく、むしろ後退と分断の印象が強まっており、長年にわたる課題に進展が見られず、各国の間には深い不満と不信が広がっているが、来年の再検討会議の成功のためには、他者の視点に立ち、短期的な国益を超えて考えることが求められる」と各国代表に呼び掛けました。ユースは「今」行動することの重要性を再認識し、「自分一人の力は小さいが、みんなと協力をして核廃絶を目指していきたい」と決意を新たにしました。

オープニング傍聴
国連国際学校(UNIS)訪問

国連国際学校マンハッタン校を訪問し、日本語を履修している現地の生徒と昼食を取りながら、お互いの関心事について質疑応答を行い、松井広島市長及び鈴木長崎市長による講演を聴講しました。講演では、両市長が被爆の実相と被爆者の平和への願いを原点に活動する平和首長会議の取組について英語で説明を行い、平和首長会議の取組にぜひ参加してほしいと呼び掛けを行いました。その後、小グループに分かれて、ユースも含めてディスカッションを行いました。ディスカッションでは、ユース代表が自身の活動や平和への思いについてプレゼンテーションを実施した後、意見交換を行い、同世代の現地の生徒達と意見交換をし、交流を深めました。ユースは、「自身の視野の狭さに気づかされた。より広い視野を持って今後の核廃絶への取り組みに励みたい」と今後の活動に向け、意欲を高めました。

訪問の様子
UNICEF(国連児童基金)訪問

UNICEFを訪問し、UNICEFが行っている緊急支援や心理的ケアの提供、また交渉を通じた人道アクセスの確保などについて学びました。質疑応答では、積極的に質問を行い、支援現場についての学びを深めました。また、深瀬平和構築担当官からは「世界には皆さんのように平和な世界を諦めず、強い思いをもって活動している人がたくさんいる。我々が力を合わせれば、物事はもっといい方向に向かうと思う。」と励ましと期待を込めた言葉をいただきました。

UNICEF職員(前列中央2名)とユース
ユース交流レセプションへの出席

山﨑国連日本政府代表部特命全権大使の主催により開催されたレセプションでは、中満国連事務次長、市川軍縮政府代表等の出席の下、ユースのほか、翌日の平和首長会議主催ユースフォーラムで発表を行うナガサキ・ユースや、その他様々な団体や現地の若者等が招待されました。
冒頭の挨拶では、ユース代表が平和首長会議について説明した上で、日頃取り組んでいる平和活動について紹介しました。その後、ユースは平和首長会議のパンフレットを用いて積極的に広報活動を行うなど、様々な関係者と交流を深めました。

レセプション参加者と交流するユース

4月29日(火)

平和首長会議ユースフォーラムの開催

同準備委員会のサイドイベントとして開催した本フォーラムでは、ユースを含め、世界各地で平和活動に取り組む若者11組が、取組発表を行い、核兵器のない平和な未来についてのビジョンについて、それぞれの視点で訴えました。発表後のディスカッションでは、主に「現在直面している課題」、「若者の役割」について議論を行い、オブザーバー参加者からも様々な意見が出るなど、核兵器廃絶と平和について活発に意見交換を行いました。フォーラムの最後には、中満国連事務次長から、若者達には自分たちの未来のために声を上げる権利がある、それを行使し、自分の意見を遠慮せずに表現してほしいとの激励の言葉をいただきました。

発表を行うユース
発表を行うユース
発表を行うユース
発表を行うユース
ディスカッションの様子
登壇者と
国連本部ガイドツアーへの参加

ガイドツアーでは、国連本部内の各種会議場や、広島平和記念資料館が貸与する被爆瓦等被爆資料を扱う常設原爆展、その他各国からの国連への贈り物を展示するエリア等を見学しました。また、総会ホールの見学中にはグテーレス国連事務総長が会議中に演説を行う様子を見ることができました。ユースは熱心にガイドを聞き、国連の会議構成や合意形成の過程等の理解を深め、国連本部内の雰囲気を肌で感じ取りました。

ガイドツアーの様子
中満国連事務次長兼軍縮担当上級代表への署名の手交及び面会

ユース代表から中満国連事務次長に、約3万4千筆分の「『核兵器禁止条約』の早期締結を求める署名」の目録を手交しました。ユースは、「核廃絶に反対の人もいるが、過去を繰り返さないためにも、声を上げ活動を続けていきたい」、「一人の力は小さいかもしれないが、仲間とともに一歩一歩、平和を願い活動を続けてきた。ここにいるユースの仲間のように平和への熱い思いを持ち、核廃絶を目指す仲間の輪を広げていきたい」と伝え、これに対し中満国連事務次長は、「世界が緊迫する今こそ、冷静な対話と本質の見極めが重要であり、ユースには地域に貢献できるよう主体的に動き、国や世界について考えられるような大人になってほしい」と激励されました。

面会の様子
中満上級代表(前列中央)とユース
市川軍縮会議日本政府常駐代表との面会

市川軍縮会議日本政府常駐代表と面会し、ユース代表が、これまで彼らが取り組んできた平和活動について報告した後、ジュネーブ軍縮会議の成り立ちや大使の外交官としてのキャリア等に関して、質疑応答を行いました。また、ユースに対し、「軍縮は無視できない課題で、市民一人ひとりが関心を持ち、協調の道を探ることが重要である。若い世代が積極的に国際社会にかかわる姿を期待している」と激励されました。

市川軍縮会議日本政府常駐代表(前列中央)とユース

4月30日(水)

UNDP(国連開発計画)訪問

UNDPを訪問し、山口国連開発計画ジャパン・ユニット上級顧問と水上パートナーシップ担当官から、国連の三本柱(平和・開発・人権)を軸に、UNDPの役割について幅広い視点から説明を受けました。その後ユースから社会課題の解決方法やSDGsに関する質問を行い、両氏から自身の体験を踏まえた丁寧な回答をいただきました。訪問後、ユースからは「新しい知見や現場の現状を知ることができ、学びの多い機会だった」との感想がありました。

面会の様子
UNDP職員(前列2名)とユース
ジャクリーン・カバッソ広島平和文化センター専門委員との面会

2007年から広島平和文化センターの専門委員を務める同氏と面会し、世界の核軍縮に向けた動きや米国内での平和首長会議の取組状況について説明を受けました。ユースとの質疑応答では、核廃絶と核の平和利用の両立の難しさ、そしてNPTが抱える問題点が共有されました。また、カバッソ専門委員は「私たちのような経験は、他の誰にもさせてはならない」と広島・長崎の被爆者が繰り返し訴え続けていることに触れながら、平和の実現には若者による持続的な活動と他国の若者たちとの連携が重要であると述べ、ユースの今後の歩みに大きな期待を寄せられました。

面会の様子
カバッソ専門委員(前列中央)とユース
第11回NPT再検討会議第3回準備委員会NGOセッションの傍聴

平和首長会議や被爆者団体を始めとする世界各地で活動する団体が、各国政府関係者に市民社会を代表して声を届けるNGOセッションを傍聴しました。松井広島市長は、鈴木長崎市長と共に平和首長会議の代表スピーチを行い、被爆から80周年を迎えた現在も地球上には1万2,000発を超える核兵器が存在し、NPTの原則に背く核シェアリングなどが有効であるという考え方が広がっていることは、NPTの原則のみならず第二次世界大戦後に目指した平和構築体制である国際連合そのものを揺るがしかねない事態であると懸念を表明した上で、平和首長会議は、市民社会の平和意識の醸成と「平和文化」に満ちた世界の創造に向けて全力で取り組む決意を表明し、各国政府代表者に対し核軍縮・不拡散措置を確実かつ誠実に実行するよう訴えました。傍聴後、ユースからは、「同じ志で活動している各国のNGOによる核廃絶を求める訴えに感動した」「被爆地広島の可能性を再認識し、未来に向けての行動の大切さを改めて感じた」との感想がありました。

NGOセッション傍聴
UN Women(国連女性機関)訪問

UN Womenを訪問し、林佐和美プログラム分析官と広田美和子エグゼクティブボードプログラム分析官から、貧困問題・ジェンダーに関する課題や背景等の説明を受けました。その後、日本の教育制度や社会課題に関する質疑応答を行いました。両氏から「世界は広く、多様で、驚くようなことがたくさんある。学びを通じて、自分が望む人生を切り開く力を育ててほしい。」と、ユースの今後の活動の弾みとなる心強いメッセージをいただきました。

UN Women職員(前列中央2名)とユース
核兵器をなくす日本キャンペーンNPT配信への出演

「核兵器をなくす日本キャンペーン」が主催するYouTubeの中継番組「国連から生中継!核兵器をなくすNPTレポート」に、ユース代表が出演した。配信では、ユースフォーラムの様子を報告し、ユースフォーラムに参加した感想として、平和な世界の実現に向けた熱い思いを共有する仲間が世界中にいることを実感し、大きな連帯感と勇気を得た有意義な機会であったと伝えました。

配信の様子

5月1日(木)

市内視察

ブルックリン橋、世界を照らす自由(自由の女神像)、チェルシーマーケット、エンパイアステートビルディング等を視察しました。視察を通じて、ニューヨークの発展の歴史や移民文化、都市デザイン、観光資源としての活用などについて学び、見識を広めました。

自由の女神像

平和首長会議ユースの派遣の感想

  • 今回の派遣を通じて、相手の意見に共感しながら自分の意見を伝えることの大切さを学びました。また、これからも被爆者の方々の思いを世界に伝え続け、核兵器を含むさまざまな社会課題の解決に向けて考え、行動していこうと、覚悟を新たにする貴重な経験となりました。ヒロシマに暮らす若者として、未来のためにこれからも尽力していきたいと思います。
  • 今回の派遣を通して、自分が目指す“平和”の形がより明確になったと同時に、「自分で考えて行動する」ことの大切さを実感し、大きく成長できたと感じました。今回学んだことを、友人や家族など身近な人にたくさん伝えていくことで、平和に関心のない人々の心を少しずつ変え、自分が目指す“サステナブルピース”へとつなげていきたいと思います。
  • 今回の派遣事業で、「声を上げることの先に、社会を動かす知恵と覚悟が必要である」 という大切な気づきを得ました。また、平和への道は決して容易ではありませんが、一歩一歩の行動の積み重ねが社会を動かす力になることを確信しました。被爆地広島の理念と国際社会の視点を統合し、現実社会で平和の実現に寄与できるよう努力を続けていきたいです。
  • 今回の派遣を通して、「対話」の大切さ、未来を担う若者たちの育成の大切さ、複雑に絡み合う国際問題を多角的に捉えることよる平和へのアプローチの必要性を学びました。これらの学びを活かし、将来は持続可能な開発に関わりながら平和に貢献したいと思っています。また、これまで続けてきた核廃絶を訴える活動も、引き続き取り組んでいきたいです。
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