平和首長会議は、スイス・ジュネーブ市で開催された第11回NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議第2回準備委員会へ、松井一實会長(広島市長)、鈴木史朗副会長(長崎市長)、香川剛廣事務総長を含む代表団を派遣し、国連・各国政府関係者等に対して、スピーチや個別の面会を通じて、核兵器のない平和な世界を願うヒロシマの心を伝え、具体的な核軍縮の進展を要請しました。
また、広島県内で平和活動に取り組む高校生を「平和首長会議ユース」として派遣し、平和首長会議主催ユースフォーラムの開催等を通じて、次代の平和活動を担う青少年の育成を図りました。
会期中には平和首長会議原爆平和展及び子どもたちによる“平和なまち”絵画展を開催し、被爆の実相や核兵器の非人道性、平和文化の振興に向けた平和首長会議の取組について理解を深めてもらう機会を設けました。
第11回NPT再検討会議第2回準備委員会NGOセッションでのスピーチ(7月23日)
松井会長は、広島・長崎の被爆体験は核兵器廃絶の根拠となるべきものであり、我々は、核兵器は「断じて使ってはいけない兵器」であると訴え続けてきたにも関わらず、現下の国際情勢では、核兵器が「条件次第で使える兵器」へと評価が変わっていることを極めて遺憾であるとした上で、広島平和記念資料館の訪問者数が過去最多となっていることに触れ、為政者に対し、平和を愛する市民社会の声を踏まえ、核戦力強化や軍拡競争を肯定的に捉えることを直ちに見直し、対話による外交努力をもって、核軍縮・不拡散措置を確実に進展させるよう訴えました。続けて鈴木副会長は、核兵器を使用したら人やまちに何をもたらすのか伝えた上で、「核兵器は絶対に使ってはならない。人類が核兵器のリスクから免れるための唯一の手段は「廃絶」しかないのだ」と、核兵器国をはじめとした各国に訴えるとともに、人類共通の願いである「長崎を最後の戦争被爆地に」という言葉を世界の皆さんと共有し、スピーチを締めました。
第11回NPT再検討会議第2回準備委員会NGOセッションでのスピーチ
会長スピーチ:英語原文・日本語訳 副会長スピーチ:英語原文・日本語訳
各国政府代表等との面会
核保有国代表
核保有国であるフランス及び米国の代表者に対し、核保有国である両国にも加盟都市があり、世界中で核兵器廃絶を求め、平和を愛する市民社会が広がっていることを紹介し、市民社会の声を軽視せず、対話による外交努力を行い、誠実に核軍縮交渉を行ってほしいと要請するとともに、平和首長会議の取組への協力を依頼しました。また、各国が考える核軍縮に向けたアプローチ等について、意見交換を行いました。
日本政府代表(7月25日)
市川軍縮会議日本政府常駐代表は、現在の国際安全保障が非常に厳しい情勢にあることを強調し、今後は、少しでも軍縮を進展させることに注力していかなければならないとの見解を示されるとともに、面会に同席したユースに対し、被爆の実相に関する映像や資料を自分の目で見て心で感じ、それを自分の言葉でアウトプットし、今後の活動の中で、多くの人に伝えていってほしいと激励されました。
その他、タイ、メキシコ、アイルランドの政府代表とも面会し、意見交換を行いました。
国連関係者等
中満国連事務次長兼軍縮担当上級代表への署名の手交及び面会(7月23日)
ユース代表から中満国連事務次長に、「この署名は、市民の平和を願う心を集めたものです。」と約4万4千筆分の「『核兵器禁止条約』の早期締結を求める署名」の目録を手交しました。中満国連事務次長は、次代を担うユースに対し、意見が異なる人との対話こそが大切であり、世界で起きていることに関心を持ち、様々な考えを聞き、対話を重ねることで、平和を構築する輪を広げてほしいと激励されました。
ヴァロヴァヤ国連欧州本部事務局長との面会(7月23日)
松井会長・鈴木副会長は、国連欧州本部内の常設原爆展の展示延長決定に対し、謝意を伝えるとともに、軍縮政策等を効果的に進めるために本展示を有効活用してほしいと期待を伝えました。これを受け、ヴァロヴァヤ事務局長は、原爆常設展は重要な展示であり、延長は自然な事であるとの見解を示されるとともに、現在の厳しい国際情勢の中では、核戦争、核兵器について特に若い世代に伝えていくことが大事であると考えており、今後も両市と連携していきたいと応じました。
ラクメトゥリン第11回NPT再検討会議第2回準備委員会議長との面会(7月24日)
松井会長は、議長の出身国であるカザフスタンの長年にわたる核兵器廃絶に向けた尽力に敬意を表するとともに、広島市と同国セメイ市のこれまでの交流に触れ、同国内における加盟拡大への協力等、今後の更なる連携強化についての期待を述べました。鈴木副会長は、厳しい国際情勢の中で開催される今回の準備委員会に対する期待を伝えました。これを受け、ラクメトゥリン議長は、国レベルで核軍縮に取り組むことも重要だが、市民社会からのインプットも非常に重要となるので、これからも平和首長会議の活動に協力していきたいと応じました。また、非常に厳しい会議の状況ではあるが、様々な利害関係者の懸念を軽減するために、最善を尽くすとも述べられました。
セス国連訓練調査研究所(ユニタール)総代表との面会(7月22日)
セス総代表は、平和首長会議の加盟都市数の増加に触れ、今後の更なる活動強化への期待を述べるとともに、被爆80周年を迎える来年に向け、核軍縮を強く進めていく必要があるとの見解を示されました。松井会長は、平和首長会議として、被爆の実相を世界に伝え続け、為政者が市民社会の声を無視することができないような環境づくりを進めるため、教育を専門とするユニタールと連携した取組を進めていきたいと協力を依頼しました。
キンボール全米軍備管理協会事務局長との面会(7月25日)
キンボール事務局長は、世界では戦争のリスクが高まっており、軍縮は困難な状況に直面しているが、広島・長崎で起こったことを繰り返してはならないとの見解を述べました。松井会長は、平和首長会議の米国における活動状況を紹介するとともに、被爆80周年を迎える来年の取組に関する意見交換を行い、今後も緊密に連携していくことを確認しました。
主催行事等
平和首長会議ユースフォーラムの開催(7月23日)
同準備委員会のサイドイベントとして開催した本フォーラムでは、平和首長会議ユースや世界各地で平和活動に取り組む若者8組が、取組発表を行うとともに、平和活動を行う上での課題等についてディスカッションを行いました。参加したユースからは、様々な立場で多様な活動を行う同世代の仲間を知る良い機会になった、従来の枠組みに捉われることなく、様々な視点から核兵器廃絶を働きかける重要性を改めて認識したとの感想がありました。フォーラムの最後には、中満国連事務次長から、これからの未来はユースの未来であり、未来を良くするための意思決定にユースが常に参加すべきであると述べ、ここにいる皆さんが引き続き平和活動に携わり、活動を発展させていってほしいと激励の言葉をいただきました。
平和首長会議役員都市意見交換会の開催(7月24日)
広島市、長崎市、フランス・マラコフ市、フィリピン・モンテンルパ市、スペイン・グラノラーズ市、クロアチア・ビオグラード・ナ・モル市、フランス支部の6都市・1支部が出席し、各都市等における取組発表や今後の活動に関する意見交換を行いました。松井会長は、出席した役員都市等に対し、厳しい国際情勢の中ではあるが、各地域での活動を強化し、市民社会における平和意識の醸成と核兵器廃絶に向けた為政者の政策転換を後押しする環境づくりに取り組んでいこうと呼び掛けました。鈴木副会長は、発表された好事例の取組を参考にしながら平和首長会議の活動がさらに活性化されることへの期待を伝えました。
平和首長会議原爆平和展・子どもたちによる“平和なまち”絵画展(7月22日~7月29日)
同準備委員会場内において、会議出席者や国連関係者等に被爆の実相や核兵器の非人道性、平和文化の振興に向けた平和首長会議の取組に理解を深めてもらうため、平和首長会議原爆平和展及び子どもたちによる“平和なまち”絵画展を開催しました。7月22日には、高村外務大臣政務官が展示を視察し、松井会長及び鈴木副会長から展示内容の説明を行いました。
その他の出席行事
ユース交流レセプション(7月22日)
市川軍縮会議日本政府代表部特命全権大使公邸で開催されたレセプションでは、中満国連事務次長、高村外務大臣政務官等の出席の下、平和首長会議ユースのほか、翌日の平和首長会議主催ユースフォーラムで発表を行うナガサキ・ユースやジュネーブ市の学生が招待されました。平和首長会議ユースは、被爆体験記を聞くことが出来るQRコードが入ったカードの配布や各学校での活動、日本文化の紹介等を通じて、参加した他の若者たちと交流を深めました。
ドキュメンタリー映画「Paper Lanterns」上映会(7月23日)
同準備委員会のサイドイベントとして、国連軍縮研究所と軍縮会議日本政府代表部の共催で開催された同上映会(広島への原爆投下で犠牲となった12名の米兵捕虜の身元を、40年以上にわたり捜索してきた森重昭氏の活動を追ったドキュメンタリー映画)で、松井会長が開会挨拶を行い、未来の世代が、この映画に登場する人々が経験したような悲惨な歴史を繰り返さないよう心から願っていると述べるとともに、この映画を通じて、被爆者の「このような苦しみを他の誰にも味わわせてはならない」という思いを感じ、より良い未来の道筋を描くきっかけとしてほしいと、集まった観客に呼び掛けました。