第11回NPT再検討会議第3回準備委員会への出席のため代表団が米国・ニューヨーク市を訪問しました。

2025年4~5月

平和首長会議は、米国・ニューヨーク市で開催された第11回NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議第3回準備委員会へ、松井まつい一實かずみ会長(広島市長)、鈴木すずき史朗しろう副会長(長崎市長)、香川かがわ剛廣たけひろ事務総長を含む代表団を派遣し、国連・各国政府関係者等に対して、スピーチや個別の面会を通じて、核兵器のない平和な世界を願うヒロシマの心を伝え、具体的な核軍縮の進展を要請しました。

また、広島県内で平和活動に取り組む高校生を「平和首長会議ユース」として派遣し、平和首長会議主催ユースフォーラムの開催等を通じて、次代の平和活動を担う青少年の育成を図りました。

会期中には平和首長会議原爆平和展、こどもたちによる“平和なまち”絵画展及びVRゴーグル体験を開催し、広島・長崎の被爆の実相や核兵器の非人道性、平和文化の振興に向けた平和首長会議の取組について理解を深めてもらう機会を設けました。

第11回NPT再検討会議第3回準備委員会NGOセッションでのスピーチ(4月30日)

松井会長は、被爆から80周年を迎えた現在も地球上には1万2,000発を超える核兵器が存在し、NPTの原則に背く核シェアリングなどが有効であるという考え方が広がっていることは、NPTの原則のみならず第二次世界大戦後に目指した平和構築体制である国際連合そのものを揺るがしかねない事態であると懸念を表明した上で、平和首長会議は、市民社会の平和意識の醸成と「平和文化」に満ちた世界の創造に向けて全力で取り組む決意を表明し、各国政府代表者に対し核軍縮・不拡散措置を確実かつ誠実に実行するよう訴えました。続けて鈴木副会長は、「核兵器は、人間らしく死ぬことも生きることも許さない絶対悪の兵器であり、決して人類と共存できない」という被爆者の実体験から発せられた言葉を共有するとともに、戦争被爆地の代表として、「核兵器は決して使ってはならない。核兵器の脅威から人類を守るためには廃絶しかない」とした上で、「長崎を最後の戦争被爆地に」というメッセージを力強く訴え、スピーチを締めました。

NGOセッションでの松井会長と鈴木副会長

第11回NPT再検討会議第3回準備委員会NGOセッションでのスピーチ
会長スピーチ:英語原文日本語訳  副会長スピーチ:英語原文日本語訳

各国政府代表等との面会

核保有国代表(4月30日)

核保有国であるフランス、米国および英国の政府代表者に対し、平和首長会議原爆ポスターを用いながら、核兵器の非人道性と被爆の実相を伝えるとともに、平和首長会議は、市民社会の立場から平和文化の振興を推進し、世界中の首長と共にボトムアップで国レベルの取組を支えていきたいとの考えを伝えました。また、NPT第6条に基づき誠実に核軍縮交渉を行うよう要請するとともに、平和首長会議への新規加盟や取組への協力を依頼しました。併せて、各国が目指す核軍縮へのアプローチ等について、意見交換を行いました。

プティ軍縮会議フランス政府常駐代表(左)
ワツラビック米国国務省国際安全保障・不拡散局上級幹部(中央)
ライリー軍縮会議英国政府常駐代表(左)

日本政府代表(4月29日)

市川軍縮会議日本政府常駐代表と面会し、同席したユース代表が、これまで彼らが取り組んできた平和活動について報告した後、ジュネーブ軍縮会議の成り立ちや大使の外交官としてのキャリア等に関してユースと質疑応答を行いました。また、ユースに対し、「軍縮は無視できない課題で、市民一人ひとりが関心を持ち、協調の道を探ることが重要である。若い世代が積極的に国際社会にかかわる姿を期待している」と激励されました。

市川大使(中央)

その他、核廃絶に向けて国際的な取引を牽引するオーストリアの政府代表とも面会し、意見交換を行いました。

国連関係者等

グテーレス国連事務総長との面会(4月28日)

松井会長から平和首長会議について説明を行うとともに、加盟都市拡大への協力を要請しました。グテーレス事務総長は、ローカルの声、首長の声をしっかりと聴き、私たち国連は平和について、多くの人々に信ぴょう性を求めていく必要があると述べ、これに対し松井会長は、基礎自治体に大変大きな信頼を寄せていただいており、ぜひ国連の平和活動の手助けにもなるような活動をしていきたいと伝えました。

グテーレス国連事務総長(中央)
中満国連事務次長兼軍縮担当上級代表への署名の手交及び面会(4月29日)

ユース代表から中満国連事務次長に、約3万4千筆分の「『核兵器禁止条約』の早期締結を求める署名」の目録を手交しました。ユースは、「核廃絶に反対の人もいるが、過去を繰り返さないためにも、声を上げ活動を続けていきたい」、「一人の力は小さいかもしれないが、仲間とともに一歩一歩、平和を願い活動を続けてきた。ここにいるユースの仲間のように平和への熱い思いを持ち、核廃絶を目指す仲間の輪を広げていきたい」と述べ、これに対し中満国連事務次長は、世界が緊迫する今こそ、冷静な対話と本質の見極めが重要であり、ユースには地域に貢献できるよう主体的に動き、国や世界について考えられるような大人になってほしいと激励されました。

中満国連事務次長(中央)
アジュマン第11回NPT再検討会議第3回準備委員会議長との面会(4月29日)

松井会長は、現在、世界各国の軍備費が増強されており、軍縮を進めることが難しい状況であるが、だからこそ理想を目指し、NPT第6条の誠実交渉義務の徹底について議長に期待していると述べるとともに、平和を目指す市民社会に向けた環境づくりを進めるためにも、ガーナにおける平和首長会議加盟都市拡大への支援を要請しました。鈴木副会長は、来年度開催されるNPT再検討会議に向け最後となる今回の準備委員会に対する期待を伝えました。アジュマン議長は、私たちの安全保障への取組は急務であり、NPTの枠を超えて、平和の新たな枠組みを再確認することや、平和首長会議の行動指針と私たちのそれは一致しており、一緒になって進めていくことの必要性について述べ、今後の協力について意見交換を行いました。

アジュマン議長(中央)

主催行事等

平和首長会議ユースフォーラムの開催(4月29日)

同準備委員会のサイドイベントとして開催した本フォーラムでは、平和首長会議ユースや世界各地で平和活動に取り組む若者11組が、取組発表を行い、核兵器のない平和な未来のビジョンについて、それぞれの視点で訴えました。発表後のディスカッションでは、主に「現在直面している課題」、「若者の役割」について議論を行い、オブザーバー参加者からも様々な意見が出るなど、核兵器廃絶と平和について活発に意見交換が行われました。フォーラムの最後には、中満国連事務次長から、若者達には自分たちの未来のために声を上げる権利がある、それを行使し、自分の意見を遠慮せずに表現してほしいとの激励の言葉がありました。

フォーラムの様子

平和首長会議原爆平和展(4月28日~5月9日)、こどもたちによる“平和なまち”絵画展、VRゴーグル体験(4月28日~4月30日)

同準備委員会会場内において、広島・長崎の被爆の実相や核兵器の非人道性、平和首長会議の取組について理解を深めてもらうため、平和首長会議原爆平和展、こどもたちによる“平和なまち”絵画展及びVRゴーグル体験を開催しました。4月28日には、岩屋外務大臣が展示を視察し、松井会長及び鈴木副会長から展示内容の説明を行いました。今回初めてNPT再検討会議においてVRゴーグル体験のブースを設置し、100名以上の来場者の方々に体験していただきました。体験者からは、「視覚的に体験できることはよい」、「他の戦争体験の継承にも応用できるのではないか」といった声があり、被爆の実相をより分かりやすく来場者に伝えることができました。

原爆平和展の様子
絵画展の様子
VRゴーグル体験の様子

その他の出席行事

国連国際学校(UNIS)訪問(4月28日)

ユースと共に、国連国際学校マンハッタン校を訪問し、在校生に対し、講演を行いました。鈴木副会長が広島・長崎の被爆の実相について、松井会長が被爆者の平和への願いを原点に活動する平和首長会議の取組について英語で説明を行い、平和首長会議の取組にぜひ参加してほしいと呼び掛けを行いました。講演を聴講した生徒と質疑応答を行った後、小グループに分かれて、ユースも含めてディスカッションを行いました。ディスカッションでは、ユース代表が自身の活動や平和への思いについてプレゼンテーションを実施した後、意見交換を行い、同世代の現地の生徒達と意見交換をし、交流を深めました。

講演の様子

ユース交流レセプション(4月28日)

山﨑国連日本政府代表部特命全権大使の主催により開催されたレセプションでは、中満国連事務次長、市川軍縮政府代表等の出席の下、平和首長会議ユースのほか、翌日の平和首長会議主催ユースフォーラムで発表を行うナガサキ・ユースや、その他様々な団体や現地の若者等が招待されました。ユース代表の挨拶では、平和首長会議について説明した上で、ユースが日頃取り組む平和活動について紹介しました。その後、ユースは平和首長会議のパンフレットを用いて積極的に広報活動を行うなど、様々な関係者と交流を深めました。

レセプションの様子
平和首長会議