2020年NPT再検討会議第3回準備委員会に合わせて、高校生を米国・ニューヨーク市に派遣しました。

2019年4月

 2020年NPT再検討会議第3回準備委員会に合わせ、その開催地である米国・ニューヨーク市に「核廃絶!ヒロシマ・中高生による署名キャンペーン」参加の高校生8名を派遣しました。
 本準備委員会の傍聴や署名の手交、平和首長会議主催ユースフォーラムでの発表や地元の青少年との交流などを通じ、次代を担う若い世代の平和に対する思いを国連等に届けました。

高校生の派遣日程:2019年4月29日(月)~5月5日(日)

4月30日(火)
NPT再検討会議第3回準備委員会(2日目)の傍聴

高校生はメモを取りながら熱心に、イギリス、ニュージーランド、アンティグア・バーブーダ、アイスランド、アルゼンチン、ポーランド、グアテマラの一般討論演説を傍聴しました。


NPT再検討会議第3回準備委員会(2日目)の傍聴
国連国際学校への訪問

国連国際学校では約125か国からの生徒が学んでいることや、勉強だけでなく平和教育、音楽、アート、演劇、スポーツの教育にも力を入れていることなどについて、国連国際学校の校舎をめぐりながら説明を受けました。
午前中には松井会長の講演を聴講し、午後からは同校の1年生約40名に自らの平和活動について発表するとともに、核兵器を廃絶するために何が必要か、若者として平和な世界を築くために何ができるか等について活発なグループディスカッションを行いました。



国連国際学校への訪問
中満国連事務次長兼軍縮担当上級代表への署名の手交行事

派遣高校生代表から中満上級代表に約12万筆分の署名目録を手交しました。高校生は、「無関心な人にどう関心を持ってもらえるか考えながら活動したい」、「若者が若者に伝えるからこそ共感が得られると思う」など、それぞれが今考えていることを中満上級代表に伝えました。中満上級代表からは「被爆者のために署名活動に取り組むことも大切であるが、自分たちがどんな世界にしていきたいのかを考え、そのためにはどのように行動すべきかを考えることも重要である」と助言をいただきました。


中満国連事務次長兼軍縮担当上級代表への署名の手交行事
河野国連軍縮部上級政務官との面会

河野上級政務官から、世界の安全保障や核軍縮にまつわる国際情勢について説明がありました。また、「自分が知っている被爆体験をアメリカの人たちに伝えるなど、将来のために今できることを考えてほしい。未来をコントロールする鍵を持っているのはあなたたちである」と高校生たちに期待を込めたメッセージを贈られました。


河野国連軍縮部上級政務官との面会


5月1日(水)
NPT再検討会議第3回準備委員会NGOセッションの傍聴

高校生たちは松井会長や田上副会長、被爆者、海外のNGO等の発言を傍聴しました。高校生の一人は、「被爆された女性と社会保障に言及したスピーチが、今まで考えたことのない角度からのアプローチで印象的だった」と感想を述べました。


ナガサキ・ユースのサイドイベント「To inherit the consciousness all humans are HIBAKUSHAs」へのオブザーバー参加

「私たちはみんなヒバクシャ」というテーマで、「ヒバク」の問題をヒロシマ・ナガサキの被爆者の問題として限定せず、自分たちの経験や学習を踏まえて、核兵器廃絶の問題はすべての人の問題だという提起を行う発表を傍聴しました。


ナガサキ・ユースのサイドイベント「To inherit the consciousness all humans are HIBAKUSHAs」へのオブザーバー参加


5月2日(木)
平和首長会議主催ユースフォーラムの実施

今回準備委員会に派遣した高校生のほか、ナガサキ・ユース代表団や平和関連のNGOで活動する世界の青少年が、自分たちの活動内容や平和への思いについて発表し、意見交換を行いました。会場には外務省軍備管理軍縮課の今西課長を始め、平和首長会議役員都市や国連職員、被爆者、多くの若者など、総勢100人ほどが集まりました。
発表に臨んだ派遣高校生8名は、各校5分の発表時間で、それぞれ作成したパワーポイントを用いながら、平和活動を通して感じた平和への思いを英語で発表しました。
最初に広島女学院高等学校は、被爆証言や手記をインターネット上で配信するサイトの運営や、被爆前の写真をカラー化する取組を説明し、アートとテクノロジーを通じて過去と現在を結び、被爆者の思いを継承していきたいと伝えました。
次に修道高等学校は、彼らが関わっている署名活動について説明し、署名活動は核兵器廃絶に向けた思いを他の人と共有できる場であることや、特に若い世代が署名活動をすることの重要性を語り、多くの若者に広島を訪れて、署名活動に協力してもらいたいと期待を述べました。
最後に、盈進高等学校の発表では、被爆者との交流を通じて、「このような思いを他の誰にもさせてはならない」という被爆者の思いを受けとめ、その思いを守り伝え、悲劇を繰り返さないために署名活動を続けていると述べました。
その後、ナガサキ・ユース代表団、海外ユースとして、Amplify、PEAC、ドイツのユース代表団の青少年による発表がありました。それぞれの特徴ある平和活動について、有意義な情報交換となりました。
これまでに何度もリハーサルを重ね、発表内容を暗唱しようと努力してきた派遣高校生は、大勢の観衆を前にしても、ひるむことなく堂々と発表を行いました。質疑応答の時間では、若者の活動に対する質問や、活動を称賛するコメントが役員都市からの参加者、被爆者、NGO関係者などから相次ぎ、質問に対して派遣高校生は積極的に答えていました。

(各発表内容はこちら)
ア 平和首長会議高校生代表団
 ・ 広島女学院高等学校
 ・ 修道高等学校
 ・ 盈進高等学校
イ ナガサキ・ユース代表団
ウ Amplify
エ PEAC
オ German Youth Delegation

平和首長会議主催ユースフォーラムの実施
市内視察

9 .11メモリアルパーク、チェルシーマーケット、セントラルパーク、タイムズスクエア等を視察しました。9 .11メモリアルパークでは、同時多発テロで亡くなった方々の名前が刻まれた慰霊碑や、ツインタワーが崩れた場所で生き残ったSurvivor Treeを見学しました。


市内視察


5月3日(金)
髙見澤軍縮会議日本政府代表部特命全権大使との面会

ナガサキ・ユース代表団とともに髙見澤大使を訪問しました。まずは髙見澤大使から、国際的な核軍縮の動きと日本の取組について説明があり、その中で若者たちにクリティカルシンキングを養うことの大切さを強調されました。
その後の意見交換では、自分たちの活動を紹介するとともに大使に聞きたいことを積極的に発言しました。大使は、「自分たちのメッセージのテーマを広げて発信すること、イベントを企画するなら内輪だけにならないよう工夫すること、自らが発信するとともに相手の話もよく聞き、様々な方法にもっと挑戦することが重要である」と若者たちにアドバイスされました。


髙見澤軍縮会議日本政府代表部特命全権大使との面会
PEACのサイドイベント「The Hibakusha Appeal」へのオブザーバー参加

米国で平和教育に取り組む平和団体、PEACの「The Hibakusha Appeal」 にオブザーバー参加しました。このイベントはヒバクシャ国際署名を紹介するもので、日本被団協から被爆者代表として派遣された、木戸事務局長と濱住事務局次長がスピーカーとして参加されました。まず、木戸事務局長と濱住事務局次長から被爆体験が語られ、その後、若い海外の平和活動家やオブザーバーを含めた意見交換が行われました。「私たちにできる最後の仕事がこの署名だ」との木戸事務局長の言葉は、同じように署名活動に取り組んでいる高校生たちの心に響き、活動に対してのモチベーションを高める機会となりました。


PEACのサイドイベント「The Hibakusha Appeal」へのオブザーバー参加
被爆者(木戸日本被団協事務局長、濱住日本被団協事務局次長)との面会

濱住事務局次長は、大学生と連携して作成している被爆者の映像や、若者が中心になって集めているヒバクシャ国際署名について説明され、若者が平和活動を行っていることの喜びを語られました。また、木戸事務局長は、「被爆者のしてほしいことに従うのではなく、自分でやりたいことを見つけ、学ぶことを続けてほしい」と高校生たちを激励されました。


被爆者(木戸日本被団協事務局長、濱住日本被団協事務局次長)との面会


派遣高校生の感想

・中満国連事務次長との面会では、「これから先、自分たちがどういう世界にしていきたいかということを考えてほしい」という言葉が印象的でした。自分には全くなかった発想だったので衝撃を受けましたし、自分がこれから平和活動を行っていく中でもっとそういった多面的な発想、アプローチが必要だと思いました。

・平和首長会議主催ユースフォーラムでの発表やサイドイベントへの参加などを通し、世界の次世代を担う若者とつながり、それぞれのコミュニティで、どのように多くの人を巻き込みながら、核なき世界を、そして世界平和を実現させていくのか、その大切さに改めて気付かされました。

・核廃絶を訴えたり議論をする際には、これまで学んできたこと以上に、もっと様々な角度からの知識が必要だということ、また、それを踏まえて、どれだけ人々の印象に残る、心に響くスピーチが出来るかがとても重要になると考えました。

・私たち若者の力は微々たるものに思えるかもしれないけれど、決して無力ではなく、むしろ世界を動かしうる大きなパワーがあることを感じました。「学ぶ」ということは中高生の私たちをはじめ、誰にでもできる平和への第一歩で、「伝える」ということは誰にでもできる平和活動だと私は考えます。それは核の脅威について学び、あの日に起こったことを伝えるだけではなく、そこから考えたことを伝えたり、科学や経済など自分が興味あることを学び、その視点から核について考え、伝えたりするということです。だから、私はこれからも学び、行動し続けます。




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