広島平和文化センター 仮訳
「核の危険が差し迫る時代にこそ対話を」
ロシアによるウクライナ侵略戦争やそれに伴う核の脅威は、事故、誤算、あるいは危機の拡大により増大する核戦争のリスクを浮き彫りにし、軍縮の緊急性ははるかに高まっている。
北東アジア、南シナ海、南アジア、中東においても核保有国間の対立が激化している。
現在進行中の敵対行為の終結についての交渉の機は熟していないと考える戦争中の核保有国の政府関係者であっても、あらゆる兵器の中で最も危険な武器を制限し、決して使用されないようにすることについて、あらゆる機会を捉え敵対国と話し合うことの価値を認識し、敵対行為を緩和する機運創出のため可能な限り外交を利用するべきだ。
核兵器が存在する限り、いかなる場合でも核兵器を永久に廃絶する方法について具体的かつ前向きに考えるべきだ。
すべての核保有国は、核兵器の質を高め、場合によっては増強しており、新たな多極化した軍備拡大競争が進んでいる。
米国は、今後30年間で2兆ドルを費やし、核の三本柱を維持、近代化する計画であり、新型弾道ミサイル潜水艦、新型サイロ発射型大陸間弾道ミサイル、新型核巡航ミサイル、改良型無誘導爆弾、新型ステルス長距離打撃爆撃機、改良型/新型プルトニウムピットを備えた各運搬システム用の付随弾頭を建造する予定だ。
2024年4月のシンポジウムで、ジル・フルビー国家安全保障庁(NNSA)長官は次のように述べた。「ピット製造能力の再構築は、マンハッタン計画直後以来、NNSAにおける最大かつ最も複雑なインフラ事業である。NNSAは昨年、国防総省に冷戦後最多となる200発以上の近代化核兵器を引き渡した。」
2023年の世界の軍事支出額は過去最高を記録し、米国の支出額は2位以下10位までの9ヵ国の合計を上回り、ロシアの約8.5倍、中国の約3倍となり、世界全体の37%を占めた。
両党の政権を問わず数十年にわたり、国土安全保障や退役軍人関連などの軍事費及びその支援システムにつぎ込まれた連邦資金は、限りある連邦政府の財源の大半を占めてきた。
1982年に設立され、広島・長崎両市長がその活動を主導する平和首長会議は、「核兵器のない世界の実現」、「安全で活力のある都市の実現」、「平和文化の振興」を目標に掲げ取組を進めている。2024年5月1日現在、平和首長会議には、米国の227都市を含む世界166か国・地域の8,389都市が加盟している。
全米市長会議は、平和首長会議の米国加盟都市が提出した決議案を18年連続で採択しており、2023年には「核戦争の回避、ウクライナ紛争の解決、中国との緊張緩和及び軍事費の人間のニーズを満たす事業への充当のための緊急行動を呼び掛ける」ことを決議した。
上記を踏まえ、全米市長会議は、以下を決議する。まず、全米市長会議は、中国、フランス、インド、ロシア、英国、米国の首脳や外相を含むG20首脳が2023年9月10日に発出したG20デリー首脳宣言の「核兵器使用の威嚇又はその使用は許されない」との宣言を歓迎する。
また、全米市長会議は、ロシアによる違法なウクライナ侵略戦争及び度重なる核兵器使用の威嚇を非難し、ロシア政府に対し、ウクライナから全軍を撤退させるよう要請する。
また、全米市長会議は、大統領並びに連邦議会に対し、ウクライナ戦争を可能な限り早期に終結させるため、最大限の外交努力を続けるよう要請する。
また、全米市長会議は、連邦政府に対し、ロシアとの信頼関係を再構築し、2026年に期限切れを迎える二国間に唯一残る核軍備管理条約である新戦略兵器削減条約(新START)の後継条約の締結に取り組むため、核リスク低減・軍備管理のための米ロのハイレベル協議再開に尽力するよう要請する。
また、全米市長会議は、2023年6月にジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官が「核リスクを管理し、2026年以降の軍備管理の枠組みを開発するため今すぐにロシアを引き込み」、「競争を管理し競争が紛争に発展しないようにするため、前提条件なしに中国を引き込む」よう呼び掛けたことを歓迎する。
また、全米市長会議は、連邦政府に対し、いかなる国も他国に対し核兵器の先制使用を禁止する核保有国間の条約についての交渉を行うため誠実になされたいかなる提案も追求するよう働き掛ける。
また、全米市長会議は、連邦政府に対し、環境、公衆衛生、公平な開発、核兵器管理のための新たなアプローチなどの地球規模の問題での協力の機会を模索し、中国との緊張を緩和するために誠実に努力するよう要請する。
また、全米市長会議は、米政権並びに連邦議会に対し、核兵器への追加投資を再考し、連邦の限りある財源が、人間のニーズをよりよく満たし、安全で活力ある都市を支援し、国際外交、人道的支援・開発、及び気候危機に対処するための国際協力への投資を増やす方法を見出すよう要請する。
また、全米市長会議は、加盟都市に対し、核保有国間での戦争の危険性の高まり、核兵器の人道的・財政的影響、及び核兵器廃絶の交渉において米国が誠実にリーダーシップを発揮する喫緊の必要性があることについて市民の意識を高めるために、都市レベルで行動を起こすよう要請する。その方法としては、被爆樹木の苗木の植樹、原爆ポスター展の開催、各地元で開催する広島・長崎の慰霊祭での市長によるスピーチ、平和首長会議が毎年実施する「子どもたちによる“平和なまち”絵画コンテスト」への参加を通じた青少年のリーダーシップの育成などが挙げられる。
また、全米市長会議は、すべての加盟都市に対し、平和首長会議の目的を推進し、10,000都市加盟という目標達成を支援するため、平和首長会議に加盟するよう奨励する。
提案者:
ウォータールー市長(アイオワ州) バークレー市長(カリフォルニア州) ビーバートン市長(オレゴン州) ダビューク市長(アイオワ州) セイラム市長(オレゴン州) バーンズビル市長(ミネソタ州)
ウェスト・サクラメント市長(カリフォルニア州) シーダー・フォールズ市長(アイオワ州) マディソン市長(ウィスコンシン州) ランシング市長(ミシガン州) アレンタウン市長(ペンシルベニア州) タコマ市長(ワシントン州)