全米市長会議(USCM)で平和首長会議加盟都市が提案した決議文が採択されました。

2023年6月5日[第91回全米市長会議年次総会(米国・オハイオ州コロンバス市)]

広島平和文化センター 仮訳

原文は英語(こちらから)

核戦争の回避、ウクライナ紛争の解決、中国との緊張緩和及び軍事費の人間のニーズを満たす事業への充当のための緊急行動を呼び掛ける決議

私たちは、全ての核保有国が核兵器を近代化し、場合によっては増強している、核兵器による異常な危険に満ちた時代を生きている。

ロシアによるウクライナへの違法な侵略戦争は、米軍及びNATO軍を争いに引き込み、ロシアとの直接対峙へと発展しかねない。ロシアの度重なる核兵器使用の威嚇により戦争が激化し、核戦争のリスクが1962年のキューバ危機以来最も高まっている。

朝鮮半島、台湾、南アジア、中東等の地域でも核兵器が使用される可能性がある。核保有国及びその同盟国は、核戦力を使う演習を含む軍事演習の規模を拡大し、頻度を高めている。また、ミサイル発射実験が継続的に実施され、核保有国の軍隊同士の接近が頻発しており、核兵器の脅威が深刻化している。

バイデン政権は、2022年の「核態勢の見直し」にて、「米国は核戦力、核指揮統制通信(NC3)システム、生産・支援インフラの近代化に全力を注ぐ」と表明した。これは、「核の3本柱」を構成する大陸間弾道ミサイル、弾道ミサイル潜水艦、長距離爆撃機を更新する計画を含むものである。

大統領は2024年度予算教書において、2022年の「核態勢の見直し」の実施に係る経費の全額を要求している。これは国防総省による核兵器関連事業の維持・近代化に係る経費377億ドルを含み、2023年度予算要求から30億ドル増加した。

ストックホルム国際平和研究所によると、2022年、世界の軍事費は過去最高の2兆2,400億ドルに上り、そのうち39%を米国の軍事費が占めた。

人類は、人間活動が生態系に与えた影響が引き起こした、気候変動やパンデミックといった未曽有の課題に直面している。そのような中、経済は米国と中国の二大国が主導している。世界経済及び国際社会が依存する自然環境を保護するためには、国際協力が不可欠である。

大国間の軍事競争の激化により、人間のニーズを充足する取組への資源投資が減少する。さらに、貧困の根絶や、全ての地域社会への医療、教育、信頼性の高い再生可能エネルギー及びその他の不可欠なサービスの提供など、幅広い分野における協力が阻害される。

現在、都市レベルの外交が果たす役割の重要性が増している。1982年に設立され、広島・長崎の両市長がその活動を主導してきた平和首長会議は、「核兵器のない世界の実現」、「安全で活力のある都市の実現」、市民一人一人が平和を追求する「平和文化の振興」を目標に掲げ取組を進めている。2023年4月1日現在、平和首長会議には、米国の223都市を含む世界166か国・地域の8,247都市が加盟している。

全米市長会議は、米国内の平和首長会議加盟都市からの提案に基づき、2018年の「米国政府と連邦議会に対し、瀬戸際から引き返し、核戦争を防止するために国際的なリーダーシップを発揮することを求める決議」及び2021年の「核兵器禁止条約を歓迎し、核戦争防止及び核兵器廃絶に向けた即時行動を求める決議」を始めとする力強い決議を17年連続で採択している。

上記を踏まえ、全米市長会議は、以下を決議する。まず、全米市長会議は、中国、フランス、インド、ロシア、英国、米国の首脳や外相を含むG20首脳が2022年11月17日に発出したG20バリ首脳宣言において「核兵器の使用又はその威嚇は許されない」と表明したことを歓迎する。

また、全米市長会議は、ロシアによるウクライナへの違法な侵略戦争及び幾度となく繰り返される核兵器の使用の威嚇を非難し、ロシア政府に対し、即時にかつ無条件で全ての兵力及び兵器を引き揚げるよう要請する。

また、全米市長会議は、連邦政府に対し、ロシアとの信頼関係の再構築及び2026年に失効する二国間に唯一残った核軍備管理条約である新戦略兵器削減条約(新START)の後継条約の締結に向けて、米ロの核リスク低減・軍備管理のためのハイレベル協議再開に取り組むよう要請する。

また、全米市長会議は、連邦政府に対し、中国との緊張緩和に向けて一層の努力を行うよう要請する。これには、環境、公衆衛生、公平な開発などの地球規模課題の解決や多額の出費を伴う危険な軍拡競争を防ぐための新たな軍備管理の在り方の模索に向けた中国との協調の可能性の追求を含む。

また、全米市長会議は、連邦議会に対し、「核兵器禁止条約の目的及び規程を受け入れる決議案」(H.Res.77)を採択するよう要請する。この決議は、これまで全米市長会議が支持を表明した同条約及び「Back from the Brink」キャンペーンに沿うものである。


提案者:


デモイン市長(アイオワ州)
バークレー市長(カリフォルニア州)
ユージーン市長(オレゴン州)
エヴァンストン市長(イリノイ州)
アーバイン市長(カリフォルニア州)
マディソン市長(ウィスコンシン州)

オークランド市長(カリフォルニア州)
ペンブローク・パインズ市長(フロリダ州)
シボイガン市長(ウィスコンシン州)
エリザベス市長(ニュージャージー州)
ハランデール・ビーチ市長(フロリダ州)
シラキュース市長(ニューヨーク州)

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