全米市長会議(USCM)が平和首長会議の活動に対する賛同決議を満場一致で採択しました。

2022年6月6日[第90回全米市長会議年次総会(米国・ネバダ州リノ市)]

広島平和文化センター 仮訳

原文は英語(こちらから)

平和及び共通の安全保障への道を切り開くための決議

オロフ・パルメ記念財団の報告書「共通の安全保障2022―共通の未来のために」は、「2022年、人類は核戦争、気候変動、パンデミックという存亡の危機に直面している。不平等、過激主義、ナショナリズム、ジェンダーに基づく暴力、民主主義的空間の縮小という要因が絡み合い、事態は悪化している。これらの危機にどのように対処するかが人類の存亡を左右する。」と指摘した。

ロシアによるウクライナへの不当で違法な戦争は、いずれ米国、NATO加盟国及びロシアを直接の軍事衝突へと引き込みかねず、ロシアの度重なる核兵器による威嚇と相まって、核戦争の不安を1962年のキューバ危機以来最も高めている。

これ以上人々が亡くなり、苦しみ、街が破壊されるのを防ぐとともに、核兵器のもたらす惨禍の危険を回避し、世界規模で発生した経済・食料安全保障への悪影響を緩和するため、この戦争を終結させなければならない。

様々な紛争が世界中で絶え間なく続く中、コロナ禍が始まって2年目の2021年、全世界の軍事費は過去最高の2.1兆ドルにまで増加した。米国の軍事費はうち8,010億ドルを占める。これは、ロシアの軍事費の12倍以上、全世界の軍事費の38%に当たる。

軍隊は莫大なエネルギーを消費し、気候変動に著しい影響を及ぼしている。

コロナ禍の影響によって米国内の経済的困難が深刻化し、多くの家庭が連邦政府の栄養プログラムへの依存を余儀なくされている。コロナ禍という公衆衛生上の危機が収まった後も、これらの家庭が根本的な食糧不足に直面することが見込まれる。

米国は今後30年間にわたり約1.7兆ドルを費やし、核兵器関連設備を一新するとともに、核兵器、核弾頭及び爆撃機、ミサイル、潜水艦などの核兵器運搬手段の更新、取替えを行う計画である。2022年度、バイデン政権は前政権の「核態勢の見直し」に記載された核戦力の近代化のために432億ドルに上る予算を措置した。

これまでのコロナ禍において、米国は、世界各国へのワクチン寄付の7.5倍の金額を核兵器に費やしている。

莫大な核兵器を保有する米国は、核戦力を有するヨーロッパの同盟国フランス・英国と合わせても、ウクライナに対するロシアの侵略戦争を抑止できなかった。

1970年に発効した核兵器不拡散条約により、米国、ロシア、英国、フランス、中国は、核軍拡競争を「早期に」停止し、核兵器を廃絶するための交渉を「誠実に」行う義務を負っている。

戦争、気候危機、経済格差等の諸問題の影響を大きく受ける都市は、国境を越えて協力し、危機に対して連帯して共通の課題に対処できることを示してきた。

広島市長及び長崎市長により1982年に設立された平和首長会議には、米国の220都市を含む世界166か国・地域の8,174自治体が加盟している。平和首長会議は、世界恒久平和への道筋として、「核兵器のない世界の実現」、「安全で活力のある都市の実現」、「平和文化の振興」の目標を掲げ、取組を進めている。

2022年3月26日、広島でのメディアブリーフィングにおいて、元シカゴ市長のラーム・エマニュエル駐日米国大使は、全米市長会議と協力して「米国のあらゆる規模の都市の市長たちに、平和首長会議に加盟するとともに、世界平和を実現するために実際に行動することを促す」と約束した。

上記を踏まえ、全米市長会議は、以下を決議する。まず、全米市長会議は、大統領及び連邦議会に対し、ウクライナにおける米国の軍事介入を抑制するとともに、戦争の長期化により戦争拡大の危険性が高まることを認識したうえで、ウクライナ及びロシアに対して早期停戦に合意し国連憲章に基づき相互に譲歩しながら交渉するよう呼び掛け、早期戦争終結のための外交努力を最大限強化するよう要請する。

また、全米市長会議は、核兵器不拡散条約の下で核兵器を保有する米国及びその他の4か国に対し、2022年8月に開催予定の第10回NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議において、核兵器が初めて使用されるとともに国連が設立されてから100年を迎える2045年までの核兵器廃絶を目標に、2030年までに期限の定めのある計画を採択するためのプロセスを開始することにより、核軍縮についての誠実交渉義務を履行するよう要請する。

また、全米市長会議は、連邦政府及び議会に対し、軍事・核兵器に係る年間支出を抑制することを要請する。これにより生じる余剰資金は、安全で活力のある都市の実現を支援するとともに、誰もが利用できる安価な医療の提供、住居確保・食料安全保障の実現、コロナ禍及び将来の災害において第一の防衛ラインの役割を担う自治体及び州への財政的支援の確保、環境にやさしい持続可能なエネルギーの促進、環境保護及び気候変動緩和など、人間のニーズを満たすために再配分するよう求める。また、外交、人道支援及び開発援助、並びに国際協力への投資を増やすよう求める。

また、全米市長会議は、10,000都市加盟という平和首長会議の目標達成を支援し、全米市長会議の全メンバーに対し平和首長会議への加盟を要請する。


提案者:


デモイン市長(アイオワ州)
バークレー市長(カリフォルニア州)
カレッジパーク市長(メリーランド州)
エリザベス市長(ニュージャージー州)
ハランデール・ビーチ市長(フロリダ州)
アーバイン市長(カリフォルニア州)
ルイビル市長(ケンタッキー州)
マディソン市長(ウィスコンシン州)

オークランド市長(カリフォルニア州)
ペンブローク・パインズ市長(フロリダ州)
プロビデンス市長(ロードアイランド州)
リッチモンド市長(カリフォルニア州)
セントルイス市長(ミズーリ州)
ウォータールー市長(アイオワ州)
サンレアンドロ市長(カリフォルニア州)
ラス・クルセス市長(ニューメキシコ州)

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