全米市長会議(USCM)が平和首長会議の活動に対する賛同決議を満場一致で採択しました。

2021年8月31日[第89回全米市長会議年次総会(オンライン)]

広島平和文化センター 仮訳
原文は英語(こちらから)

核兵器禁止条約を歓迎し、核戦争防止及び核兵器廃絶に向けた即時行動を求める決議

核兵器廃絶国際キャンペーンのレポートによると、9か国の核保有国は、2020年に合わせて726億ドルもの費用を核兵器に投じた。中でも米国の歳出額は最大の374億ドルであり、1分当たり70,881ドルを費やした計算となる。

2021年1月27日、米国の科学誌「原子力科学者会報」は、人類滅亡までの残り時間を象徴的に示す終末時計の針を、最も深夜に近づいた前年と同じ「残り100秒」に留めたままとすることを発表した。その理由として、「75年前から今日まで存在し続ける、世界が核戦争に陥る可能性が2020年に高まった。」との分析を示し、「核兵器や気候変動といった脅威については、民主主義や人民主権が依存する、本来健全であるべき情報ネットワークの腐敗が続き、近年、ますますその危険性が高まるという相乗効果が生じてしまっている。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、世界に警鐘を鳴らすものである。」と指摘した。

近年、米露間及び米中間の緊張が著しく高まる中、ウクライナや台湾情勢を引き金に核兵器を用いた衝突が起こる可能性がある。

バイデン政権が示した2022会計年度予算案は、軍事費を前年から110億ドル増額して要求するものである。また、前任の大統領が成立させた予算を投じて米国が保有する全ての核弾頭やその運搬システムの増強を図り、核兵器のインフラへの巨額の投資を行っている。これは1970年発効の核兵器不拡散条約が米国に課す核軍縮義務に違反するものであり、核兵器の研究、開発、生産及び配備を二十一世紀に入って久しい今日にまで延長して実施するものである。

2021年1月22日、核兵器禁止条約(TPNW)が発効した。これは、条約の批准国に対し、核兵器の開発、取得、保有、使用及び使用の威嚇等を禁止するものである。

TPNWが大多数の非核保有国による核兵器の全面否定の意思表明そのものである一方、米国、他8か国の核保有国及び米国の核の傘の下にあるほぼ全ての同盟国は条約の交渉の場をボイコットし、なおも条約に批准していない。

1982年に設立され広島・長崎の両市長が主導する平和首長会議は、世界恒久平和への道筋として、「核兵器のない世界の実現」、「安全で活力のある都市の実現」及び「平和文化の振興」の三つの目標を掲げ、取組を進めている。

平和首長会議の加盟都市数は米国の219都市を含む165か国・地域の8,043都市に達しており、その総人口は10億人を超える。

全米市長会議は、16年連続で平和首長会議の取組に賛同する決議を全会一致で採択している。

上記を踏まえ、全米市長会議は、以下を決議する。まず、全米市長会議は、米国政府に対し、TPNWへの反対を撤回するよう検討し、TPNWの歓迎を核兵器廃絶の実現と核兵器のない世界の永久維持を目的とした合意形成への前向きなステップとするよう呼び掛ける。

また、全米市長会議は、2021年6月16日に米露のバイデン・プーチン両大統領が発表し、その中で「核戦争に勝者はなく、決して起こしてはならないという原則を再確認する。」と表明した共同声明を歓迎する。バイデン政権に対しては、ロシアや中国との外交努力を加速させることにより核兵器をめぐる緊張を緩和し、TPNWの成立に何十年も先立ち締結した国際法上の定めに従い、核兵器廃絶に向けた核保有国間の検証可能な合意を積極的に追求することを要請する。

また、全米市長会議は、バイデン政権に対し、国際法が米国に課す核兵器の不使用と廃絶の義務を誠実に果たすことを今後「核態勢の見直し」に盛り込むよう求める。

また、全米市長会議は、大統領及び連邦議会に対し、米国の全核軍備を近代化及び強化させる計画を中止し、現在核兵器や不当な軍事費に割り当てられている財源を、数十年にもわたって蔑ろにしてきたインフラ整備、貧困問題、日々悪化する気候危機や格差の拡大への対応に再配分することを要請する。

また、全米市長会議は、大統領及び連邦議会に対し、軍備管理軍縮局を再設立することにより、連邦政府の優先事項として軍備管理及び軍縮に一層精力的に取り組むことを呼び掛ける。

また、全米市長会議は、10,000都市加盟という平和首長会議の目標達成を支援し、全米市長会議の全メンバーに対し平和首長会議への加盟を要請する。

提案者:

デモイン市長(アイオワ州)
デイトン市長(オハイオ州)
コロンビア市長(サウスカロライナ州)
エリザベス市長(ニュージャージー州)
ダビューク市長(アイオワ州)
ニューベドフォード市長(マサチューセッツ州)
カレッジパーク市長(メリーランド州)
ピッツバーグ市長(ペンシルべニア州)