事務総長が「2019カーネギー国際核政策会議」への出席等のため米国を訪問しました。

2019年3月

 小溝事務総長はサンフランシスコ市、ロサンゼルス市等を訪問し、市長及び市関係者に対し、米国西海岸での平和首長会議の活動の活性化と地域内の連携強化及び米国のリーダー都市であるデモイン市との協力関係の強化を要請しました。また、平和NGO関係者と面会し、平和首長会議との連携を呼び掛けました。
 さらに、小溝事務総長は、米国ワシントンD.C.でカーネギー国際平和財団が主催した「2019カーネギー国際核政策会議」に出席し、核をめぐる国際社会の動向を議論するパネルディスカッションで意見を述べました。

小溝事務総長訪問日程:2019年3月5日(火)~3月14日(木)

3月5日(火)
宇山智哉在サンフランシスコ日本国総領事との昼食会

小溝事務総長は、平和首長会議が超党派の平和NGOとして核兵器の法的禁止を肯定しつつ、世界各地域の自主性を尊重し、世界恒久平和への道筋として「核兵器のない世界の実現」と「安全で活力のある都市の実現」の二つに取り組んでいることを説明しました。また、米国のリーダー都市であるデモイン市のカウニー市長によって、こうした取組が一層活発になることを期待していると述べました。宇山総領事からは、サンフランシスコ市における核軍縮に関する取組の現状説明や、今後の取組におけるキーパーソンの紹介がありました。

宇山智哉在サンフランシスコ日本国総領事との昼食会
スコット・セーガン スタンフォード大学教授との面会

セーガン教授から、教授自身が実施した核に関するアンケート調査の結果が紹介されました。それによると、過半数の人々がイランに対する核兵器の使用に賛成で、米国は一撃にして北朝鮮の核施設を破壊することができると信じている等の偏った結果が出ており、正確な事実認識に極めて乏しいことを指摘しました。
小溝事務総長は、平和首長会議が行動計画で、「核兵器のない世界の実現」に加え「安全で活力のある都市の実現」という新しい目標を立てて取組を推進していることや、平和首長会議の活動が、米国内ではリーダー都市であるデモイン市のカウニー市長を中心に、215の加盟都市を牽引しながら推し進められていることを紹介し、この動きが新たな世論醸成につながることを期待していると述べました。

スコット・セーガン スタンフォード大学教授との面会
3月6日(水)
リビー・シャーフ オークランド市長との面会

小溝事務総長は、平和首長会議の概要及び「安全で活力のある都市の実現」という新たな目標を説明するとともに、被爆樹木の取組や2018年から開始した子どもたちによる“平和なまち”絵画コンテストなど具体的な取組について紹介し、オークランド市に参加を呼び掛けました。
これに対し、シャーフ市長は、オークランド市長として市民の安全は最も優先順位が高い問題であると述べ、平和首長会議への加盟要請に対する協力についても積極的な姿勢を示しました。

リビー・シャーフ オークランド市長との面会
WISR(Western Institute of Social Research)及びWSLF(Western States Legal Foundation)主催講演会への出席

講演会はまず、バークレー市長からのメッセージの紹介から始まり、バークレーの大学教授がマンハッタン計画に関わっていたことへの反省から、非核自治体として名乗りを上げたバークレー市が、その後、平和首長会議に加盟し、冷戦が終結した後も積極的に核のない世界の実現にむけて取り組んでいることが紹介されました。
小溝事務総長は講演の中で平和首長会議の理念に触れ、被爆者の強い思いを受け止め、人類というひとつの家族のメンバーとして、お互いが多様性を認め、協調しながら、平和な世界を目指さなければならず、そのためには、対話、包括性、相互補完性がいかに重要であるかを熱く語りました。そのメッセージはダイレクトに会場の方々に伝わり、講演後にはスタンディング・オベーションが起きるほどでした。

WISR(Western Institute of Social Research)及びWSLF(Western States Legal Foundation)主催講演会への出席
WISR(Western Institute of Social Research)及びWSLF(Western States Legal Foundation)主催講演会への出席
3月7日(木)
ジェリー・ブラウン 前カリフォルニア州知事との面会

小溝事務総長は、核問題が日に日に人々に身近な問題になっていることから、市民の安全を守るという責任を担う市長が平和首長会議に加盟する動きが続いていることを紹介し、市民社会が積極的に参加することで、草の根の相互理解が深まり、対立でなく協調への道が見つかるだろうと述べました。
ブラウン氏は、平和関係のNGOの主要メンバーとして平和に関するプロジェクトを企画していることや、平和研究機関の関係者等と頻繁に意見を交わしていることを紹介しました。
小溝事務総長は、トップリーダーに進言できる人々と連絡を取り合い、核兵器保有国をはじめ世界のリーダー達が核兵器の無い世界に向けた方針転換をできるような環境整備に努めていることを伝えました。

ジェリー・ブラウン 前カリフォルニア州知事との面会
エディー・マカーフリー サンフランシスコ市 州及び連邦関連業務部長との面会

小溝事務総長は、将来、サンフランシスコ市が米国西海岸における平和首長会議のリーダー的存在となることを期待していると述べ、平和首長会議の被爆樹木の取組、子どもたちによる“平和なまち”絵画コンテスト、広島・長崎講座、インターンの受入れ等の取組を紹介し、サンフランシスコ市の協力を要請しました。
マカーフリー部長は、今回の意見交換をブリード サンフランシスコ市長に報告し、日頃から同市が連絡を密にしているオークランド市やロサンゼルス市と連携し、平和首長会議の取組を推進していきたいと述べました。

エディー・マカーフリー サンフランシスコ市 州及び連邦関連業務部長との面会
3月8日(金)
エリック・ガルセッティ ロサンゼルス市長との面会

小溝事務総長が、平和首長会議の概要と具体的な活動についての説明を行い、米国内ではデモイン市がリーダー都市として215の加盟都市を牽引していることを伝えました。また、平和首長会議の新たな目標である「安全で活力のある都市の実現」は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)とも呼応していると述べると、ガルセッティ市長は、ロサンゼルス市は米国におけるSDGsリーダーとして、環境問題などについて具体的に取組を推進していることを紹介しました。
また、同市長からは、被爆樹木の取組への協力について積極的な姿勢が示されました。

エリック・ガルセッティ ロサンゼルス市長との面会
PSRロサンゼルス支部主催の講演会

PSR(社会的責任のための医師の会)ロサンゼルス支部の副所長デニーズ・デュフィールド氏の呼びかけで小溝事務総長の講演会が開催され、NGOやASA(米国広島・長崎原爆被爆者協会)、現地の学生等、約30名が集まりました。
小溝事務総長は講演で、平和実現への道のりは険しいが、今回の参加者全員と平和を目指す気持ちを共有できたので、連携を深めながら、また明日から平和へ向けての取組を推進しようと呼び掛けました。
この集会には、現地の高校生や大学生も10名ほど参加し、小溝事務総長は、NPT再検討会議におけるユースフォーラム等、平和首長会議のプログラムやイベントにぜひ参加してほしいと述べました。

PSRロサンゼルス支部主催の講演会
3月9日(土)
キャシー・ムリリョ サンタ・バーバラ市長及びデイビッド・クリーガー 核時代平和財団代表との面会

キャシー・ムリリョ サンタ・バーバラ市長や、デイビッド・クリーガー代表を始めとする核時代平和財団(Nuclear Age Peace Foundation:NAPF)のメンバーと昼食のテーブルを囲んだ席で、小溝事務総長は、平和首長会議の新たな目標「安全で活力のある都市の実現」を紹介し、各地域、各自治体の自発的な取組を尊重する平和首長会議は、サンタ・バーバラ市がサンフランシスコ市、オークランド市、ロサンゼルス市と協力し、米国におけるリーダー都市であるデモイン市を中心に独自の取組を推し進めることを期待していると述べました。
ムリリョ市長は、市民の貧富の差を少しでも解消し、生活レベルを向上させようと日々取り組んでいるが、今後は更にNAPFや平和首長会議と連携し、環境破壊や平和問題にも目を向けていきたいと述べました。

エキャシー・ムリリョ サンタ・バーバラ市長及びデイビッド・クリーガー 核時代平和財団(Nuclear Age Peace Foundation)代表との面会
3月11日(月)
「2019カーネギー国際核政策会議」への出席

小溝事務総長はワシントンD.C.で開催された「2019カーネギー国際核政策会議」に出席しました。同会議は、カーネギー国際平和財団が2年に一度開催しており、今回は、世界45か国から800名もの外交官、研究者、専門家らが一堂に会し、国際社会が直面する核兵器・核エネルギー等に関する課題を議論し、解決策を探りました。

3月12日(火)
「2019カーネギー国際核政策会議」でのパネルディスカッション 「今後の核拡散の行方(Proliferation Prognostication: Predicting the Nuclear Future)」への参加

小溝事務総長は、他の4名のモデレーター及びパネリストと共に登壇し、イランや北朝鮮の核問題、米ロ関係等に関し意見を交わしました。
冒頭、小溝事務総長は、被爆者の「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という強い思いが、「すべての人間は生まれながらにして平等であり、創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」という、アメリカの独立宣言に込められた理念と共通すると述べ、重要な平和のメッセージを、先入観にとらわれず、相手方の価値観にも配慮した対話により実現しようとする平和首長会議の活動と理念を紹介すると、多くの参加者から、是非広島を訪れたいとの反響が寄せられました。

「2019カーネギー国際核政策会議」でのパネルディスカッション 「今後の核拡散の行方(Proliferation Prognostication: Predicting the Nuclear Future)」への参加