全米市長会議(USCM)が平和首長会議の活動に対する賛同決議を採択しました。

2017年6月26日[第85回全米市長会議年次総会(米国・フロリダナ州マイアミビーチ市)]

広島平和文化センター 仮訳
原文は英語(こちらから)

トランプ大統領に対し、核をめぐる緊張緩和に努め、外交を優先させるとともに、核兵器関連の支出を削減して市民ニーズと環境問題への対応に配分することを求める決議

米国の科学誌「原子力科学者会報」は、「2016年は、国際社会は、核兵器と気候変動という人類の存亡に関わる緊急課題に十分に対応することができず、世界の安全保障をめぐる状況は悪化した」として人類滅亡までの残り時間を象徴的に示す終末時計の針を残り2.5分まで進めた。これにより、1953年以来、時計の針は最も深夜に近づいたことになる。

国際的な核兵器廃絶運動「グローバル・ゼロ」のエグゼクティブ・ディレクターであるデレク・ジョンソン氏はこう語っている。「核兵器使用の危険性が同時多発的に拡散しており、これは人類が直面したことのない状況だ。NATO・ロシア間、朝鮮半島、南アジア、南シナ海、台湾… 各地域での問題に核保有国がからんでおり、大惨事につながりかねない」

2017年5月5日、「グローバル・ゼロ」は「ニュークリア・クライシス・グループ」を編成した。米国、ロシア、中国、韓国、インド、日本、パキスタン、ポーランド等の元外交官・軍人・安全保障の専門家等で構成されるこのチームは、世界各地の紛争の火種が核兵器の使用に発展することのないよう、対応策を講じることを目的としている。

米国とロシアがその90%以上を保有する15,000発近くの核兵器のほとんどは広島・長崎に投下されたものとは桁違いの威力を持ち、人類と生物圏に対する耐えがたい脅威であり続けている。

「人口密集地域において核兵器が爆発した場合に引き起こされる人的被害及び人道上の惨禍に十分に対応できる能力はどこの国にも、また、国際的にも存在せず、そのような能力は今後も存在し得ない」として、「核兵器を忌むべきものとし、禁止し、廃絶する」努力を誓った「人道の誓約」は、127カ国の賛同を得ている。

米国は、照準能力の大幅な向上等を含む、核爆弾・核弾頭・運搬システムの近代化を進めており、ロシア、中国、フランス、英国、インド、イスラエル、パキスタンも同様の近代化を進めている。

本決議は、米国を核拡散の扇動者として名指しすることを意図するものではない。

マーティン・ルーサー・キング牧師は、演説「ベトナムを越えて:沈黙を破る時」において予言的な言葉を残している。「社会の向上ではなく軍事力に莫大な予算をつぎ込む国は精神の死に近づいてゆく」、

全米市長会議は2016年のその決議において、次期大統領に対し「1970年発効の核拡散防止条約で定められている通り、核兵器の廃絶に向けた多国間交渉に誠実に取り組む」ことを要請している。

米国、ロシアをはじめとする核保有国は反対したものの、2016年の国連総会では「核兵器を禁止し、最終的にはその廃絶につながる法的措置に関する交渉を行う国連の会議を2017年に開催する」とする決議が圧倒的多数で採択された。

2020年までの核兵器廃絶を目指す平和首長会議の加盟都市数は、米国の210都市を含む162カ国7,295都市に達しており、その総人口は10億人を超える。

上記を踏まえ、全米市長会議は、以下を決議する。まず、米国政府に対し、核兵器をめぐる緊張緩和に向け、ロシア、中国、北朝鮮及びその他の核保有国とその傘下にある国々との緊密な外交政策を推進すること、また、米国とロシアが保有する核兵器の大幅な削減を急務とするよう要請する。

全米市長会議は、核兵器廃絶につながる歴史的な核兵器禁止条約交渉が、世界の大多数の国々の参加を得て国連において開催されていることを歓迎する。

全米市長会議は、米国及びその他の核保有国が本交渉への参加を拒否していることを深く憂慮する。

全米市長会議は、米国政府に対し、本交渉を核兵器のない世界の実現と恒久的な維持に関する総括的な合意締結に向けた重要な一歩と位置付けて支持すること、また、期限を設定し検証可能な形で核兵器を廃絶するための多国間交渉に誠意を持って取り組むことを要請する。

全米市長会議は、議会による承認なしに大統領が核兵器を先制使用することを禁止する法案「2017年核兵器先制使用制限法」が連邦上下両院に提出されたことを歓迎する。

全米市長会議は、トランプ政権による新たな「核戦略体制の見直し」(NPR)の策定にあたっては、核兵器の廃絶を目指すとする過去の目標を再確認するとともに、警戒態勢の解除、他の核保有国との連絡網の改善、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコへの米核弾頭配備の終了等、核兵器のリスクを低減する方策を講じるよう要請する。

全米市長会議は、トランプ大統領並びに連邦議会に対し、既存核兵器が無能化・解体を待つ間、その安全を確保するために必要な最低限のレベルまで核兵器関連の支出を削減することを要請する。

全米市長会議は、軍事費を削減し、そうして得た資金を市民ニーズと環境問題への対応に配分することを連邦議会に求める決議がニューヘイブン(コネチカット州)、シャーロッツビル(ヴァージニア州)、エヴァンストン(イリノイ州)、ニューロンドン(ノースハンプシャー)、ウエスト・ハリウッド(カリフォルニア州)等の市議会で採択されていることを歓迎する。

全米市長会議は、トランプ大統領並びに連邦議会に対し、国家予算における優先順位を見直し、現在核兵器に充てられている予算及び根拠のない軍事関連予算を「コミュニティ開発包括補助金制度」と「アメリカ合衆国環境保護庁」に配分するとともに、崩壊ししつつあるインフラ再建と、教育、環境保護、食糧や住宅、健康管理のための支援に配分するよう要請する。

全米市長会議は、米国の全ての市長に対し、2020年までに10,000都市加盟を目指している平和首長会議に加盟するよう要請する。また、既加盟都市に対しては、他の核保有国の都市との姉妹都市提携を通じて積極的な関与を呼び掛けるとともに、核兵器の人道的影響・財政上のコストについて、核保有国間で戦争の危険性が高まっていることについて、そして世界の核兵器廃絶交渉に米国が誠意を持って対応することが緊急的に求められていることについて、都市レベルで啓発活動を行うよう呼び掛ける。

共同提案者:
デモイン市長(アイオワ州)
ホールヨーク市長(マサチューセッツ州)
ダビューク市長(アイオワ州)
デートン市長(オハイオ州)
マディソン市長(ウィスコンシン州)
ウエストパームビーチ市長(フロリダ州)
ユージーン市長(オレゴン州)
ノーマル市長(イリノイ州)
ウェスト・ハリウッド市長(カリフォルニア州)
サンレアンドロ市長(カリフォルニア州)
イーストン市長(ペンシルベニア州)
ラシーン市長(ウィスコンシン州)
ロチェスター市長(ミネソタ州)
サンタ・バーバラ市長(カリフォルニア州)
ペンブローク・パインズ市長(フロリダ州)
オークランド市長(カリフォルニア州)
リトル・ロック市長(アーカンソー州)
カレッジパーク市長(メリーランド)
ビーバートン市長(オレゴン州)
トーランス市長(カリフォルニア州)