国会議員及び市民社会によるイランと核兵器に関する要請文を発出しました。

2006年2月7日

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(原文は英語、広島平和文化センター仮訳)

国会議員及び市民社会によるイランと核兵器に関する要請文
イラン危機の平和的解決と中東の非核化核兵器の先制不使用

ブッシュ大統領、アフマディネジャド大統領、その他の大統領・首相、外相、国務長官、IAEA理事及び大使 様

核兵器の拡散は、人類にとって唯一最大の脅威です。核拡散が広がっていけば、悪意、狂気、誤解、誤作動による核兵器使用の可能性が急速に高まります。全ての国は核兵器保有国の数を増やさないこと、核兵器が非核保有国の手に渡ることを防ぐ責任があり、核兵器保有国には核兵器を廃絶する責任があります。

軍事行動や核兵器使用に関する威嚇や風評は、イランと米国、イスラエル間の危機的状況を助長するだけです。

軍事行動のための準備や調査に関する報告は、どれだけ論理的であっても、極めて不穏当で危機に陥れるものです。このような調査は中止されなければなりません。戦争のことが話題になってはならないのです。

しかし、アメリカ、イスラエルの巷では、戦争のことが話題に上っています。アフマディネジャド大統領、あなたは、「地図からイスラエルを消してしまえ」と述べています。アメリカ、イスラエル国内では、「短気な人たち」が公然と“軍事行動への移行”を要求しています。同時に、責任を負うべき指導者は“いかなる選択肢も排除しない”と述べています。ブッシュ大統領、私たちは、この二つの発言をイラク侵攻の数か月前に使われたことを知っています。我々は、軍事行動及び核兵器使用の調査を即刻中止するよう求めます。また、エルバラダイIAEA事務局長が求めている関係国の好戦的な空論の即時中止に賛同します。

アメリカ合衆国とその他の核兵器国及び事実上の核兵器保有国は、国際的に義務付けられた完全かつ無条件の核兵器の廃絶という目的に向かってほとんど進展を見せていません。核兵器の全貯蔵量を削減することに、わずかな進展は見られますが、すでに核兵器を保有している国は安全保証政策の中で核兵器に頼り続けており、近い将来この姿勢を変えようとは考えていません。

核兵器が人類や文明に引き続き脅威をもっているという明らかな国際合意や、完全な核兵器廃絶のための進展を求める国際社会の度重なる要求にもかかわらず、核兵器の保有はいまだに続けられています。

核兵器を大量に保有している国は、自国が核兵器廃絶に向けた努力を行っていないにもかかわらず、他国に対して、核兵器の保有に向けた行動をやめるよう常にそして執拗に要求することはできません。核兵器廃絶のために国際的に努力をすることは、文字通り国際的に努力することであり、全ての国が平等にその責務を負わなければなりません。例外はないのです。現在、核兵器を保有している国は、その核兵器を廃絶する義務があるのです。核兵器を保有していない国は、核兵器の獲得に乗り出してはならないなのです。

同様に、中東の非核化を侵害している国が、ほかの国の侵害を非難することはできないのです。しかしながら、ある一つの国が核兵器の保有を放棄した場合には、他国が放棄することを慫慂することにつながります。

イスラエルの核兵器とイランによる核兵器の獲得は、それ自体が危険であり、さらに今後、他の中東諸国への核拡散への道を開くことになります。また、中東地域における兵器競争は非常に危険なものとなりこのような事態は決して起こってはなりません。

アメリカの核政策には、核の先制使用を含む他国への攻撃や核兵器を持たない国への核攻撃などを予想させるような深刻な懸念があります。この件に関して、アメリカの上院議員などからの最近の書簡に注目しています。

三度目の核兵器使用は、決して起こってはならないのです。イランやイスラエルの人々にとっての大惨事ではなく、その地域全体ひいては世界全体の大惨事となってしまうもののです。なぜならば、放射能汚染や大混乱を巻き起こすだけではなく、60年間も核兵器が使用されなかったという、核兵器の使用に関するタブーを破ることになるからです。このタブーを破ることで、障害は非常に低いものとなり、さらなる核兵器の使用を引き起こす可能性があるからです。核兵器使用の拡大は世界中に大惨事をもたらします。我々は、全ての国に対して核兵器を追い求めることの放棄及び核兵器使用を禁止する政策の採択を要求します。

ここに署名した議員や市民団体及び著名な人物は、次の明確な真理を基に、アメリカとイラン、イスラエル間の緊張関係を解決する努力を行うよう要請します。

  1. (1)いかなる国も、どんな理由であれ、軍事行動を起こしてはならないこと。

  2. (2)今回の状況において全ての核保有国の核兵器を使用しないという明確な約束及び核兵器の先制不使用を政策に取り入れるというより幅広い約束。

  3. (3)1995年のNPT条約の中東の非核地域化決議の履行と、国連総会において毎年満場一致により採択される中東地域の非核地域化の確立決議の履行、特に今年の中東における核拡散に関する決議の履行。

  4. (4) 2000年NPT条約再検討会議における最終文書とそれに関連する国連総会決議の徹底遵守を含む、全ての国による核兵器の全世界的な核兵器廃絶の明確な約束。

  5. (5) 双方の妥協及びイスラエル、イランを含む関係国の安全保障上の懸念を認め、また、敵意を扇動する発言や軍事行動のための調査を控えるといった、アメリカ、イスラエル、イラン間の緊張緩和に向けた外交努力を行うこと。

(送付先)

  • 米国
    • ジョージ・ブッシュ大統領
    • コンドリーザ・ライス国務長官
    • ドナルド・ラムズフェルド国防長官
    • ジョン・ボルトン国連大使

  • イラン
    • アフマディネジャド大統領
    • キャマル・ハラズィ外務大臣
    • ザリフ・コンサリ国連大使

  • イスラエル
    • エフッド・オルメルト首相代行
    • ツィピ・リブニ外務大臣
    • ダン・ギラーマン国連大使

(写し送付先)

  • EU
    • ホセ・マニュエル・バローソ欧州委員会委員長

  • 英国
    • トニー・ブレア首相兼欧州理事会会長
    • ジャック・ストロー英国外務大臣

  • オーストラリア
    • ジョン・ハワード首相
    • アレキサンダー・ダウナー外務大臣

  • フランス
    • ジャック・シラク大統領
    • ドミニク・ド・ビルパン首相
    • フィリップ・ドゥースト・ブラジー外相
    • ジャン・マルク・デラサブリエール国連大使

  • ドイツ
    • ホルスト・ケーラー大統領
    • アンゲラ・メルケル首相
    • フランツ・ヴァルター・シュタインマイヤー外務大臣

  • 国連
    • コフィ・アナン国連事務総長

  • IAEA
    • モハメド・エルバラダイIAEA事務局長
    • ウォルフガング・シュッセルEU議長、オーストリア首相
    • プーチンロシア大統領、イワノフ外務大臣
    • 中国国連、ジュネーブIAEA査察団、IAEA役員