専門委員の見解:ヨーロッパの核兵器に関する議論

2025年5月[トーマス・ハイノツィ専門委員]

トランプ大統領の発言により、ロシアがNATO加盟国に対して侵略を行った場合に、米国が本当に軍事的支援を行うのかという疑念がヨーロッパで広がっています。米国の関心がヨーロッパからアジアへと移行する中で、ヨーロッパ諸国は防衛問題において自立せざるを得ないという現実に気づき始めています。EUは、欧州各国の軍備強化に向けて大規模な通常兵器の強化プログラムを開始しました。

米国からの新たなメッセージは、NATO加盟国に対する「核の傘」の信頼性に大きな疑問符を投げかけました。これまでも、多くのヨーロッパ人は疑念を抱いていました。専門家たちは、これまでも米国大統領がヨーロッパでの紛争でロシアに対して核兵器を使用する可能性は低いと指摘してきました。なぜなら、その場合には米国の大都市がロシアの核攻撃の標的となるリスクがあるからです。そして今、この「核の傘」が実際の戦争では開かれない可能性があることが、誰の目にも明らかになってきています。

この事態を受け、米国に依存しないヨーロッパの核兵器の可能性について議論が起こっています。主にフランス、そして場合によってはイギリスの核戦力を「ヨーロッパ化」するという案です。フランスのマクロン大統領はすでに2020年にそのような提案をしており、他のヨーロッパ諸国による共同資金提供も視野に入れていました。ただし、核兵器の使用に関する最終的な決定権はフランス大統領に留まるとされていました。一部のヨーロッパ諸国はこの提案に関心を示しましたが、果たしてフランス大統領がロシアに隣接する国を守るためにパリを危険にさらす決断を下すのかという疑問が残ります。代替案として、ポーランドの首相はポーランド独自の核兵器開発の可能性にも言及しています。

しかし、フランスの核兵器を他のヨーロッパ諸国に配備すること、また非核兵器国による核兵器開発は、いずれも核不拡散条約(NPT)に対する明白な違反となります。こうした道を進もうとする国々は、北朝鮮と同様にNPTから脱退しなければなりません。そのような動きは、中東や東アジアをはじめとする他の国々にも核武装の動機を与えることになり、結果としてNPT体制の崩壊を招き、世界を15〜20カ国の制御不能な核兵器保有国が存在するより危険な状態へと導く恐れがあります。

これは、核抑止力のための核兵器が安全をもたらすのではなく、かえって人類の存続に対する深刻な脅威となっていることを改めて証明するものです。