平和首長会議規約

 1945年8月、人類史上最初の核兵器が広島と長崎へ投下され、言語に絶する大惨禍を現出させ、多くの被爆者が今なお、肉体的、精神的、社会的な苦悩を強いられているにもかかわらず、核兵器は依然として廃絶されず、全人類の生存が脅かされている。広島・長崎の悲劇が再び地球上で繰り返されることなく、市民が安全かつ文化的な生活を営める環境を確保し、世界の恒久平和の実現に寄与するために、世界の都市と都市が国境を越え、思想・信条の違いを乗り越えて連帯し、核兵器の廃絶に向けて努力することを誓うものである。
 われわれは、広島・長崎両市が提唱した都市連帯推進計画の趣旨に賛同し、さらに、1985年8月に第1回が開催された“世界平和連帯都市市長会議”を恒久のものとするため、ここに平和首長会議という機構を設ける。

  • 第1章 目的及び原則
  •  (目的)
  • 第1条 平和首長会議は、都市連帯推進計画に賛同するすべての都市(以下「連帯都市」という。)相互の緊密な連帯を通じて核兵器廃絶の市民意識を国際的な規模で喚起するとともに、人類の共存を脅かす飢餓・貧困等の諸問題の解消さらには難民問題、人権問題の解決及び環境保護のために努力し、もって世界恒久平和の実現に寄与することを目的とする。
  •  (原則)
  • 第2条 この機構及び連帯都市は、前条に掲げる目的を達成するため、次の原則にそって行動するものとする。
  • ⑴ この機構は、その連帯都市の置かれている実情を尊重しつつ、友好、親善を基調とするものであること。
  • ⑵ この機構は、世界の主要な平和維持機構である国際連合との協調のもとに核兵器の全面撤廃と恒久平和の確立さらには飢餓・貧困等の諸問題の解消、難民問題、人権問題の解決及び環境保護に向けて活動するものであること。
  • ⑶ 連帯都市は、都市間相互の交流に努め、相互理解のもとに連帯の絆をより強固にしつつ、この規約に従って目的達成のため、誠実に行動すること。
  • ⑷ 連帯都市は、他の都市にも連帯を呼びかけて、“ヒロシマ・ナガサキの心”の普及に努め、さらに連帯の輪を広げるよう努力すること。
  • 第2章 事業
  •  (事業)
  • 第3条 この機構は、第1条の目的を達成するため、次の事業を行う。
  • ⑴ 広く世界の都市に連帯を呼びかけること。
  • ⑵ 国際連合など関係機関に対して、核兵器廃絶と全面完全軍縮に関するアピ-ルを行うこと。
  • ⑶ 連帯都市が下記の事業を推進するにあたり、必要な調整を行うこと。
    • ① 平和・軍縮又は飢餓・貧困等の諸問題の解消、難民問題、人権問題の解決若しくは環境保護に貢献するための集会または行事を開催し、宣言文、決議文等を発した場合は互いにそれらを交換し合うこと。
    • ② 国連軍縮週間には、核兵器廃絶と全面軍縮に関するメッセージを国際連合事務総長及び総会議長に送るとともに、互いにそのメッセージの交換を行うこと。
    • ③ 平和・軍縮・安全保障又は飢餓・貧困等の諸問題の解消、難民問題、人権問題の解決若しくは環境保護に関する研究会または集会等を開催した場合は、その結果をとりまとめた資料・図書を各連帯都市に紹介すること。
    • ④ 平和・軍縮・安全保障又は飢餓・貧困等の諸問題の解消、難民問題、人権問題の解決若しくは環境保護に関する資料あるいは図書やパンフレットを自ら出版し、または入手した場合は、互いに紹介し合うこと。
    • ⑤ 現下の国際情勢において核軍縮こそ解決すべき緊急課題であることを考慮し、特に広島・長崎における原子爆弾被害の実態を広く市民に認識させるため“原爆写真展”などを開催すること。
    • ⑥ 広島・長崎両市は、開催に必要とする写真資料を提供するなどの協力を行うほか、原爆の被害を示す記録映画、スライド、図書類の紹介を行うこと。
  • ⑷ その他、必要な事業を行うこと。
  • 第3章 役員
  •  (役員)
  • 第4条 この機構に次の役員を置く。
  •      会長   1 名
  •      副会長 若干名
  •      理事  若干名
  • 2 会長及び副会長は、総会において連帯都市の首長の互選によって決定する。
  • 3 会長は、この機構を統轄及び代表し、会議の議長となる。
  • 4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故あるときはその職務を代理する。
  • 5 理事は、会長が連帯都市の首長の中から選任する。
  •   なお、選任にあたっては、地域性を配慮して行うものとする。
  • 6 理事は、会長及び副会長を補佐し、この機構の円滑な運営を図るものとする。
  •  (任期)
  • 第5条 役員の任期は、次期総会において新たな役員が選任されるまでの間とし、再任を妨げない。
  • 2 前項の規定にかかわらず、役員に選任された連帯都市の首長が、当該首長の職を退任し、又は辞任した場合は、後任の首長を役員とする。この場合において、任期中退任し、又は辞任した役員の後任者の任期は、前任者の残任期間とする。
  • 第4章 会議
  •  (総会及び理事会)
  • 第6条 この機構の会議は、総会及び理事会とする。
  •  (総会)
  • 第7条 総会は、原則として4年に1回開催する。
  • 2 総会は、第1条の目的を達成するために開催し、重要な事項を議決・承認する。
  •  (理事会)
  • 第8条 理事会は役員で構成し、必要に応じて随時開催する。
  • 2 理事会は、急施を要する場合、必要に応じ、総会に代わりこの機構の意思(会長及び副会長の選任を除く。)を決定することができるものとする。
  •  (招集)
  • 第9条 会議は、会長が招集する。
  •  (表決)
  • 第10条 会議の出席都市(出席できない場合は、他の出席都市に委任することができる。以下同じ。)は、1都市につき1個の表決権を有する。
  • 2 会議の議事は、出席都市の過半数でこれを決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
  • 3 会議が開催できない場合は、文書によって表決することができる。
  • 第5章 事務局
  •  (事務局の設置)
  • 第11条 この機構の事務を取り扱わせるため、公益財団法人広島平和文化センター(以下「広島平和文化センター」という。)に事務局を置く。
  •  (職員)
  • 第12条 事務局に事務総長及び事務次長のほか若干名の職員を置く。
  • 2 事務総長は、広島平和文化センター理事長をもって充てる。
  • 3 事務次長は、広島平和文化センター常務理事をもって充てる。
  • 4 事務総長及び事務次長以外の職員は会長が任命する。
  • 5 事務総長は、事務局の事務を統括する。
  • 6 事務次長は、事務総長を補佐し、事務総長に事故があるとき又は事務総長が欠けたときは、その職務を代理する。
  • 第6章 経費の負担
  •  (経費)
  • 第13条 事務局の運営に要する経費(経常経費)及び会議の開催に要する経費(臨時経費)については、別に定める。
  • 第7章 雑則
  •  (改正)
  • 第14条 この規約の改正は、総会において、出席都市の3分の2以上の同意を必要とする。
  •  (委任)
  • 第15条 この規約に定めるもののほか、この機構の運営に関し必要な事項は会長が定める。

改正経緯
1986年(昭和61年)11月1日 制定
1991年(平成3年)10月16日 一部改正
2001年(平成13年)8月5日一部改正
2013年(平成25年)8月6日一部改正