平和学
開設大学とシラバス
広島経済大学 平和学
広島から平和を考える
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水本 和実
到達目標
「平和」とは、誰にでも分かる概念のようで、実はその言葉を用いる人により、多種多様な意味を持っている。本講義では、広島や日本、世界における「平和の喪失」の具体的な事例を取り上げる。その上で受講生に対し、個々の事例ごとに、①なぜ平和が損なわれたのか、②平和の喪失をもたらした原因は何か、③どうすれば平和が回復できるのか、について自分の頭で考え、自分なりの明確な見解を持つことを求める。
授業内容
戦後の広島において、「平和」は常に被爆体験と表裏一体で語られてきた。
一方、広島の外に目を向ければ、国内や海外には悲惨な「平和の喪失」体験が数多く存在し、それぞれの民族や国家は自らの悲惨な体験を土台に「平和」を模索している。
しかし、個々の民族や国家が自分の体験のみを土台に「平和」を自己主張するだけでは、グローバルな平和は来ないのではないか。
以上のような問題意識のもと、「被爆体験」「戦争」「紛争・対立」がもたらす平和の喪失について、ビデオなどを用いながら具体的に学び、最後に「平和を創り出す」ための方策について、広島の経験をもとに考える。
授業計画
<被爆体験と平和>
- 原爆はなぜ広島に投下されたか
- 核兵器の危険性
- 劣化ウラン兵器の危険性
<戦争と平和>
- 生物・化学兵器と旧日本軍の毒ガス
- 沖縄戦と平和
- 日本の軍事侵略・植民地化と中国・朝鮮半島
<紛争・対立と平和>
- ユダヤ民族とホロコースト、イスラエル建国、中東紛争
- インド・パキスタンの独立と宗教対立
- 旧ユーゴスラビアに見る民族対立
- カンボジア内戦と虐殺
- 民族のアイデンティティーと独立の模索――クルド民族を事例として
- 米国ブッシュ政権の「対テロ戦争」と宗教対立
<平和をどう創り出すか>
- 核兵器の規制と「原爆投下正当論」
- 広島発の国際協力・復興支援
教科書
特に教科書は用いず、講義ごとにレジュメを準備します。
参考文献
山田浩・吉川元編『なぜ核はなくならないのか』法律文化社、2000年
広島市・長崎市原爆災害誌編集委員会編『広島・長崎の原爆災害』岩波書店、1979年
劣化ウラン研究会『放射能兵器劣化ウラン』技術と人間、2003年
松野誠也『日本軍の毒ガス兵器』凱風社、2005年
フランクル著作集1『夜と霧』みすず書房、1971年
鏡武『中東紛争』有斐閣選書、2001年
川上洋一『クルド人 もうひとつの中東問題』集英社新書、2002年
広島平和研究所編『21世紀の核軍縮』法律文化社、2002年
成績評価
出席点・受講態度(20%)、小テスト3回(30%)、定期試験(50%)
備考
受講心得:講義では、受講生の発言を出来るだけ促します。受講中は講義に集中し、私語や他人に迷惑となる行為は慎むこと。