開設大学とシラバス

広島国際大学 グローバル社会を考えるⅠ

1 年度

2017年度

2 科目名

グローバル社会を考えるⅠ

3 副題

文化摩擦の視点から

4 担当教員

橋本 学, 二宮 伸治, 鶴田 一郎

5 科目区分

選択

6 配当年次

1

7 単位(時間)

1 (30)

8 期間

後期

授業の目的・ねらい

  • 広島市国際平和推進事業の一環として認定された“平和学講義”
    広島市が進めている国際平和推進事業の一つに被爆体験を学問的レベルで若い世代に継承することを目的とする「広島・長崎講座」設置協力プログラムがあり、国内外の大学に対して「広島・長崎講座」の開設を呼びかけている。
    2014年1月現在「広島・長崎講座」開設大学は国内46(広島9大学)、海外17の併せて63大学 を数えるが、本大学もその一つであり、本科目がそれに当たる(2008年10月開設)。
  • 現代社会の実情に鑑みた“平和学講義”の必要性
    「平和」とは、突き詰めれば“社会の安寧”“人類の安らかな生活”が実現された状態を意味する概念であろう。
    だとすれば、現代社会はなおその状態に向かう“途上”にあると言わざるを得ない。科学技術の発展や情報化・国際化の進展とともに人々の生活は便利で豊かなものとなり、地球規模の交流や協力関係も一層の高まりを見せているが、その一方で経済等の地域格差は一向に改善されず、様々な要因を背景とする国際紛争は跡を絶たず、福島原発事故(2011年3月11日)のような科学技術に関わる事故が我々の「平和」的生活を脅かしているからである。
    従って現代社会に生きる者は「平和」実現へのアプローチを怠るべきでなく、今日ある非「平和」的社会について、その原因を理解し、問題克服に向かって努力を続けねばならない、と思量される。
  • 「戦争と平和」をめぐる歴史的諸問題へのアプローチをとおして今日的課題の構造的解明を図る
    そこで本講義では、「平和」と対概念をなす一要素としての「戦争」に焦点を据え、わが国における戦争と悲惨を構造化し、a)戦争と科学技術の連関がもたらす危機と脅威、b)核兵器を含むABC兵器の非人道性、c)それらがもたらす被害の多様性と深刻な影響、などを理解させるべく、(1)近代化過程における軍事と技術、(2)対外戦争による加害と内地の被害、(3)“軍事都市”広島・長崎における原爆被災と諸相、(4)戦争がもたらす精神的破壊、の各方面から検証を試みる。特に(3)では、可能な限り、原爆被害の実相に迫るべく、戦前期における広島・長崎の“軍事都市”化を明らかにし、広島爆心地のCG化(復元)を踏まえ原爆が一般市民が暮らす市街地に投下された事実を実証するほか、外国人被爆者の存在に関する検証を通じて被爆者が日本人だけでなかったことを認識させる。その上で、「まとめ」では、世界の核状況(核兵器保有、原発被害)や国際紛争など、今日的課題をも指摘し、問題の構造や深刻さへの理解を深めさせる

到達目標

国際紛争が跡を絶たず、またわが国の戦争経験者、原爆・水爆による核被災者が減少しつつある中で、若い世代に戦争体験を学問的に継承させ、「平和」の意義を実践化し得る基礎力を涵養するとともに、原発問題など現代社会に潜む諸問題への“批判の眼”や“分析力”“考察力”を育成する。

授業の流れ

第1回 (全員)
「平和」とはなにか?
導入的議論
 (1)「戦争」は「平和」の対概念か?
 (2)いわゆる「平和教育」の検証
 (3)グローバル化のなかで「平和」を考える
本講義は“平和とは何か?”との視点から今日のグローバリズム社会を“解剖”しなおそうとするもの。皆さんには高校までの「平和学習」を振り返るとともに、シラバスをよく読んで授業の趣旨を理解しておいて頂きたい。(30分)

第2-4回 (二宮)
近代化過程における軍事と技術~科学技術の光と影~
 (1)軍事技術と「平和」実現の科学技術
第1回の授業内容(わが国における「平和」への認識を検証し、グローバル化の中で「平和」実現を目指す意義を考える)を整理した上で、高校の歴史系教科書(日本史・世界史)等で近代部分の歴史的流れを確認しておこう。(30分)
 (2)明治以降における日本の軍事技術
第2回の授業内容(わが国の近代化過程=幕末・明治維新以降における技術革新の両面性:軍事方面と平和実現に向けた科学技術の並存という史実の意味)を整理する。配布された講義資料(二宮担当分)に目を通しておく。(30分)
 (3)技術開発を歪めた官僚主義の問題
第3回の授業内容(わが国の近代化過程における技術革新の具体的な特徴・問題点について、明治以降の軍事技術に係る進歩へのプロセス、また限界を軸に考察)を整理する。配付資料を読んで第4回の授業に備える。(30分)

第5回 (二宮)
近代戦争の諸相(1)~誤った“成功経験”に導かれる不幸の連鎖~
 (1)大量虐殺の思想
 (2)戦略爆撃の展開
第4回の授業内容(近代化過程における日本の技術革新が必ずしも円滑に進まなかった要因を、日本社会の特質=官僚主義の観点から検討)を含め、日本における近代化過程について自己の見解を纏めてみる。(30分)

第6-7回 (橋本)
近代戦争の諸相(2)~加害と被害:日本の場合~
 (1)対アジア侵略の展開と加害の実相 ~臨戦地域・占領地域、そして強制連行~
第5回の授業内容(科学技術を駆使した近代戦争に象徴的な大量虐殺・戦略爆撃は、実は誤った“成功経験”に導かれた不幸の連鎖である)を整理し、戦争がもたらす悲惨について、ネット情報などを手懸かりに調べてみよう。(30分)
 (2)戦時下における一般国民の悲惨 ~戦時生活、臨戦地(外地)邦人、沖縄戦と住民、アメリカ軍の本土空襲~
第6回の授業内容(加害と被害は表裏であるとの認識を踏まえ、日本が展開したアジア侵略の悲惨を、臨戦地域・占領地域の双方から検討)を整理するとともに、日本側は同時に戦争の被害者でもあった史実を調べよう。(30分)

第8-9回 (橋本)
広島・長崎における原爆被災の実相(1) ~廣島からヒロシマへ、長崎からナガサキへ~
 (1)戦前期の広島・長崎 ~原爆被災前夜における軍事都市の形成~
第7回の授業内容(第二次世界大戦下、日本は他国に対して戦争を展開する一方、結果として実は自国民を悲惨な状況に追い込んでいた)を含め、とくに近代戦争がもたらした悲惨について自分の考えを纏めてみよう。(30分)
 (2)広島・長崎における原爆被災 ~文献・映像に基づく検証~
第8回の授業内容(わが国が受けた原爆被災は日本が展開した軍事政策の結末であり、誤った科学技術政策の末路とも言える)を整理し、配付資料をもとに、戦前期の軍事都市としての広島・長崎について認識を深めよう。(30分)

第10-11回 (橋本)
広島・長崎における原爆被災の実相(2)~外国人被爆者をめぐって~
 (1)広島・長崎における外国人被爆者の存在と被害
第9回の授業内容(広島・長崎における原爆被災の実態:文献・映像資料等に基づく検証)を整理するとともに、中学・高校時代の平和学習教材やインターネット等で、広島や長崎での具体的な原爆被害について調べてみよう。(30分)
 (2)外国人被爆者の戦後の諸相
第10回の授業内容(広島・長崎における外国人被爆者の存在:原因・背景と被害)について整理するとともに、配付資料やインターネット情報を参考にしつつ、彼ら外国人被爆者の戦後について考えてみよう。(30分)

第12-14回 (鶴田)
戦争がもたらすもう一つの悲惨 ~精神的破壊の問題~
 (1)戦争神経症とは何か
第11回の授業内容(外国人被爆者の戦後:様々な苦悩)を含め、広島・長崎における原爆被災について自己の考えを纏めてみるとともに、戦争被害が今日に至るまで発生し続けていることへの認識を新たにしておこう。(30分)
 (2)PTSD「心的外傷後ストレス障害」とは何か
第12回の授業内容(戦争はヒトに肉体的被害だけでなく、精神的ダメージをも与える:「戦争神経症」から「PTSD」に至るプロセス)を整理するとともに、第二次世界大戦からイラク戦争に至る世界の動きを確かめておこう。(30分)
 (3)沖縄戦におけるアメリカ軍兵士の戦争神経症
第13回の授業内容(PTSDは戦場の将兵ばかりでなく、予期なく生じる自然災害の被害者にも認められる)を踏まえ、インターネット等で阪神淡路大震災や東北大震災における被災者の証言に接してみよう。(30分)

第15回 (全員)
まとめ~「平和」実現に向けた今日的課題~
担当者全員による総括的議論
 (1)核をめぐる諸問題
 (2)跡を絶たぬ国際紛争
 (3)「平和」実現への模索etc.
第14回の授業内容(沖縄戦においてアメリカ軍兵士に現れた「戦争神経症」に関する映像記録を通じ、戦争がもたらす精神的破壊の実像と悲惨を考える)を含め、これまで担当者3名が行ってきた講義内容を振り返りつつ、自己の考えを整理し、第15回の授業(「平和」実現に向けた議論)に備える。(60分)

評価基準

  • 担当者ごとに成績評価方法は異なるので、各担当者の説明に注意すること。
  • 各担当者の成績評価方法は、二宮・橋本・鶴田とも、各担当内容終了後の小レポートによるものとする。
  • 最終的な成績評価(100点満点)は各担当者による評価の合算値により決定される。
  • 各担当者の配当点数は、担当コマ数(比率)に基づき、二宮30点、橋本40点、鶴田30点とする。

教科書・参考図書

◎教科書は特に定めない。  ※必要資料を随時配布する。
※但し、履修者は受講前に本シラバスの「授業の目的・ねらい」を精読するとともに、プリントアウトをして、授業時には常に持参するよう心懸けること。

履修要件

他学部他学科からの履修「履修可」
試験、レポート等については、フィードバックを行います。

リンク

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